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【ショートストーリー相続編】自筆証書遺言②

【ショートストーリー相続編】自筆証書遺言②

2020.03.10

法的な解決だけでは終われないドラマがある。

一見、書類だけでは無機質に思える裁判結果にも、その背景には様々な人生模様が隠されているのです。当事務所の水谷が日々扱う事例を取材し、それを元にフィクションでショートストーリーを作成しました。
母の死後「一切の財産を次男に譲る」といった内容の自筆遺言証書が発見され…
兄弟間の絆はどうなるのでしょうか?

理不尽な遺言に、憤慨する嫁…

「何それ…!全く、意味がわからないんですけど…! 絶対に認めちゃダメよ!」

鬱々とした思いのまま家に帰り、報告すると妻の怒号が家中に響いた。

「ちゃんと言ってやったんでしょうね?
あなたが長男でしょ? どうして次男が継ぐのよ。
大手企業に就職して親元をきちんと離れて立派に独立したのに、
どうしていつまでも親のスネかじってるような裕士さんが全財産持っていくのよ!
私だって長男の嫁として、それなりに気を遣ってきたつもりよ。
それに入院してからの半年間、病院の付き添いだってちゃんと交代でしたじゃない。
裕士さんのところなんて実家に転がり込んでローンもないし
教育費だって二人とも公立行かせているんだから、お金がかかってないじゃない。
うちは私立に二人も通わせているし、来年大学入学控えた受験生に、
留学希望の次男がいるっていうのに。
それにしてもお義母さん、何があったっていうのよ。
酷すぎるじゃない。ほんと意味わかんない!
長男としての遺留分はきちんと請求してもらいますからね」

私自身、遺言を見て母親に完全否定されたようなショックばかりが大きかったが、
妻のいうことを聞いてようやく目が覚めた思いだった。
普段はどちらかといえば温厚で、
私の実家には悪口など言わなかった妻の思ってもみなかった態度だった。
そうか、家のローンも二人分の進学費も…、うちは今一番お金がかかる時期なのだ。

遺留分?
スマホで検索してみると
遺言で一定割合以上を失ってしまう場合には、それを取り返す手段があるらしい。
妻が詳しく調べている横で、私はぼんやりと考えていた。

母にとって私は一体何だったのだろう。
何がいけなかったのだろう。
親の期待に沿える様に、真面目に勉強もし大企業に就職して家族も構え、
名前を継ぐであろう孫たちにもしっかりとした教育の場を与えていた。
盆と正月には実家に帰り、それ以外にも時折、メールや電話などもしていたつもりだ。
それなのに、何の期待にも沿えていない、
いつまでも親元を離れられないあいつを、どうして最期まで選んだのだ…。
俺が何をしたというのだろうか。そこまで愛されていなかったのか___。

「あなた、聞いているの? 
知り合いに相続に強い弁護士さんが用賀にいるって聞いたから、
その人にアポとって明日すぐに相談に行きますから。
こんなのやってられないわよ。不公平にもほどがあるわよ。
今までそんな険悪な関係の素振り一つ見せなかったのに、
亡くなってからそんなこと言い出すなんて、お義母さんもひどくない?
だいたい裕士さんの奥さんも、大して気も利かないのに甘えるのだけは上手で…
あぁイラつく! とにかく全面的に争いますから!!」

とにかく嫁の怒号が止まらない。自分の親でないから余計か?
亡くなった悲しみや拒絶された辛さというよりは、弟家族に全財産全てを持っていかれた憤りなのか。
今まで腹の底に抱えていた黒い部分が露呈し始めた。
母や弟家族に対してひどい悪態をついていたのも、自分としてはショックだった。

…もしかして母は嫁のこういった黒い部分を感じていたのだろうか。

兎にも角にも、幼少期から特別仲が良かったわけではないが、
いがみ合う感じでもなかった兄弟だったが、明らかに修復できそうにない亀裂が入ってしまった。(続く)

【もっとよくわかる!法律用語解説】
「遺留分」とは
遺言の内容が,相続人の最低限の取り分を侵害しているときに認められる、相続財産を確保できる最低限の割合のこと(法定相続分の1/2又は1/3になるので,法定相続割合とは異なる)。遺留分を請求できる相続人は、配偶者・子ども・父母のみ(兄弟姉妹は請求権者ではないことに注意)。当然に分けられるものではないので、今回のケースのように遺留分を確保したいときは、減殺するべき遺言・贈与などがあることを知ったときから1年以内に、相続した人に対して「遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)」を行う必要がある。

この様に世田谷用賀法律事務所では、相続及びこれに関連した家事・人事事件を多く取り扱っています。
家族のことではありますが、法律の力を借りないと解決できないことがあります。
相続事件でお悩みの方、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
では、また次回もお楽しみに!

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