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【ショートストーリー相続編】自筆証書遺言③

【ショートストーリー相続編】自筆証書遺言③

2020.03.10

法的な解決だけでは終われないドラマがある。

一見、書類だけでは無機質に思える裁判結果にも、その背景には様々な人生模様が隠されているのです。当事務所の水谷が日々扱う事例を取材し、それを元にフィクションでショートストーリーを作成しました。
大好評の自筆遺言証書の最終話となります。

「弟に一切の財産を譲る」この遺言書を巡り、自分と弟、そしてその配偶者たちの人間模様が明らかになってきました。さて決着はいかに、そしてまさかの事実が発覚…? 兄弟間の絆はどうなるのでしょうか?

調停の場で語られた、弟の真実

「それでは相続人である弟の裕士さんに対して
『遺留分減殺請求』を行う、ということでよろしいですね」
「はい、宜しくお願いします」

数日後、弁護士からの内容証明が届いたのか弟から連絡があった。
「兄さん、これはどういうこと? 母さんの意思に背くようなことはしないでくれよ。」
弁護士に任せたから、あとは弁護士と話してくれないか。
手短に終わらせて、電話を切った。

遺産は、弁護士によると査定の結果、母と住んでいた不動産の時価価格が6000万に相当。
あと銀行の預金残高が3000万、合計で9000万になるのだそう。
兄弟で均等に分割しても一人4500万だ。
遺留分はこの半分の2250万円。
裕士は、相続した遺産の預金から十分払えるはずだった。

それなのに、裕士は頑として支払いには応じなかった。

弁護士から聞くには、弟は何を言っても「母さんの意思」の一点張りだったようだ。
毎日、一緒に生活していただけあって、日々の細かなことを言われるとこちらも言葉がない。
とはいえ、母とは疎遠になっていたわけでもないし、手助けが必要な時はすぐにでもかけつけていた。
俺の一体何が母さんをそう思わせてしまったのか…?
その原因がわからない上に、もうそれを確認することもできない。
一生俺は母から否定され続けて生きていかなくてはならないのか。
そう思うと、もう悔しさと寂しさと、自分を攻めるか弟を攻めるかしかなかった…。

私は弁護士に告げた。
「裕士は私にとって唯一の兄弟です。
できるだけ円満に収めたいと思っていますが、遺言にあった不動産と預金に関しては遺留分請求させてもらいます」

弟は結局遺留分の支払いには応じず、家庭裁判所での調停になった。
しかし、その調停で驚きの事実が発覚した。

弟は調停でこう言ったそうだ。
「…いや、違うんです。兄さんが悪いんじゃないんです…」
居たたまれなくなった弟は、ポツリと語り出したそうである。
「実は僕が投資に失敗してしまって…借金があるのを母さんは知っていたんです」

弁護士によると、裕士には多額の借金があり、その返済のためにすでに母の預金を使い込んでいて、
遺留分が支払えないのだそう。

その借金に当てさせるために、不動産ばかりか全預金を弟にやる遺言を書いたということか…?!
そんなことを母さんはずっと気にして晩年を過ごしたというのか?
この期に及んでそんな心配までかけやがって…!いつまで子どもなんだ!!

私は怒りと呆れと、情けない気持ちで話を聞いていた。
どうして今まで相談してくれなかったんだ…。
それにどうして俺たちが巻き込まれないといけないんだ…

結局、調停委員の働きかけで、弟は相続した自宅を担保に借入れをして
2000万円かぎりで支払ってくれることになった。
弟には相続税の負担もあるので、250万円の妥協はやむをえなかった。

5回目の期日での調停和解の成立だった。
債務の件ではまた妻が憤慨し口うるさく言っていたが、もうそこは放っておいた。

母は私に無用な心配をかけたくないので、借金の件も言わなかったのだろう。
この際、遺留分などどちらでもよかった。
とにかく私は母に拒まれたわけではない、それが分かっただけでも心が救われた。

それにあんなバカな弟でも、唯一血を分けた兄弟だ。
母さんを心配させた怒りはあるが、ずっとそばで支え続けたのも裕士だった。
一時はもう絶縁状態になるだろうと確信していたが、
今は困った時はお互い相談できる存在でありたいと思っている。

【よくわかる!法律用語解説】
和解とは
紛争の当事者が、互いに譲り合って争いを解決する契約のこと。
裁判外でする和解(示談)と、裁判上でする和解がある。

今回のケースのように、相続トラブルは物事を整理してお互いの言い分を聞き
公平な解決や納得した和解を導くためにも、専門家に相談するのが近道です。
当事務所では初回のご相談料は頂いておりません。お気軽にご相談ください。
それでは、また別のショートストーリーでお会いしましょう。お楽しみに!

*この物語は、当事務所で取り扱いのあった事例を元にフィクションで構成しています。

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