法律コラム
「私、離婚できますか」不貞はどこからが不貞なのか【離婚への道】第12回
家事裁判を得意としている水谷弁護士によるコラム【離婚への道】。
これまでは離婚への手続きや方法などをお伝えしてきましたが、ここからはより具体的な離婚事由について。
弊所へのご相談の際、離婚相談で多いのが「これって離婚できますか?」というお問い合わせ。
これ、実は弁護士泣かせの質問なんです。
「私の離婚請求は、裁判上認められますか?」という意味合いでしたら、弁護士は答えることができますが、多くの方はそういった意味では聞いておらず、「相手は離婚に応じるでしょうか?」という真意であることがほとんど。
もちろん、お話の中から、なんとなく展開が予想できることはありますが、このご質問に対しての答えとしては「お相手に聞いてみないとわかりません」としか言いようがないです。
「これって離婚できるの?」と思うその前に
離婚の可否について、基本的な考え方として、次の3点を抑えておきましょう。
●「法律上の」離婚事由があっても、すぐに離婚しなければならないわけではない。
●「法律上の」離婚事由があってもなくても、お互いに離婚していいと思っているなら、離婚はできる。
●離婚するかしないかについて意思が合致しない場合に、「法律上離婚できるか」=裁判上離婚請求が認められるか、が問題になる。
「法律上の」離婚事由について、民法770条第1項は、次の5つの離婚事由を規定しています。
<民法770条第1項>
1号 配偶者に不貞行為があったとき
2号 配偶者から悪意で遺棄されたとき
3号 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
4号 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
5号 その他婚姻を継続し難い重大な理由があるとき
今回は1号の「配偶者に不貞があったとき」について、実際に多いご質問にお答えしながら解説します。
風俗やキス、夫婦が不仲の場合は…不貞とされる?
不貞と呼ぶのは、本来、夫婦だったら「貞操義務」、つまり相手に「操を捧げる」(古い言い回しですが)義務があるからです。ですので不貞行為とは、配偶者以外の異性と自由な意思に基づいて、性的関係=肉体関係を持つことです。
そこでよく疑問に思われるのが以下の3つです。
①風俗の利用でも不貞になるか?
風俗利用でも不貞は不貞ですが、婚姻関係破綻の事情として裁判上離婚が認められるかは、慎重な検討が必要です。
②キスだけでも不貞になるか?
キスだけでも、「不貞」に対する慰謝料は(少額にはなりますが)発生することがあります。ただし、キスだけでこのことが婚姻関係の破綻をもたらしていなければ、裁判所も離婚を認めないことがあります。
③夫婦が不仲になってからの不貞なら、不貞になるか?
「妻(夫)とはうまくいっていなかった。だから、ほかの異性との関係は不貞ではないはず」というご相談も多くあります。
別居して相当期間が経過したのちの婚姻外の異性との関係は、そのことが改めて婚姻関係に影響を与えるわけではないので、「すでに婚姻関係が破綻している」と判断され、離婚事由とされない(破綻の抗弁)ことはあります。
ただし、一緒に生活していて、寝食を共にしていたような場合には、破綻の抗弁は容易に認められるものではないのが実状です。
不貞をした側からの離婚請求はできる?
あと、「不貞を行った側からの離婚請求はできるのか」と聞かれることも。
不貞を行った側=夫婦関係を破綻させたことに責任を有する「有責配偶者」からの離婚請求は、信義則に反する(=ルール違反)ということで、認められにくいのが原則です。しかし、
①長期間の別居
②未成熟な子どもがいない
③離婚後に相手方の生活が困らない(そのために金銭的提案)
これらの場合には、認められるケースがあります。
ここでいう長期間(①)はかつては7年以上とも8年以上ともいわますが、実際には②との関係で、必要な別居年数は異なります。
なお、有責配偶者からの離婚の請求は、なにも不貞の場合に限りません。
夫婦を破綻させた原因を自らもたらした側からの請求は、認められないとされています。
証拠集めに躍起になるまえに
「証拠は必要ですか?」「これって証拠になりますか?!」といってご相談にみえる方も多いもの。
およそあらゆる事案で沢山の証拠が必要なわけではありません。
相手に不倫の事実を認めさせる証拠、裁判所に不倫の事実を立証する証拠、不倫には争いがないけれどその程度の重さを示す証拠、事案によって必要なものはさまざま。
相手がすでに不倫を認めている場合には、もちろん必ずしも証拠は必要にはなりません。
不安な気持ちに駆られ、証拠集めに奔走する前に、一度まずは専門家にご相談してみてください。
離婚問題・男女問題にお悩みの方は、まず無料相談から
まずは困りごとの内容を簡単に伝えるだけで大丈夫です。
詳しいことはお会いしてからゆっくりとお話を伺います(初回の相談料はいただいておりません)
離婚を求める人、離婚を請求された人、両方の相談が可能です。
その他、不倫、内縁解消、婚約破棄など男女関係に関する件も同様です。
弊所では弁護士事務所には珍しい、オンライン予約システムを導入しております。
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*この記事は2018年11月の記事を再構成しています
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