法律コラム

他界した夫のかわりに、義母の介護を行ってきた女性が請求できる「特別寄与料」とは【実際にあった相続相談】

他界した夫のかわりに、義母の介護を行ってきた女性が請求できる「特別寄与料」とは【実際にあった相続相談】

2024.05.20

弁護士の青山です。
今回は身近なところで起こっている「相続」に関する法律コラムです。
具体的事例をもとに、相続に関わる素朴な疑問に答えてまいります。
 
長年にわたり介護をしてきた義母を看取ったAさん。
義母の法定相続人は、長女と長男の二人であり、二男であるAさんの夫は既に他界しています。
長女と長男は遠方に居住しており、義母の介護はAさんが一人で行ってきました。
しかし、Aさんは法定相続人ではなく、推定相続人であった夫に分配されるはずだった相続分も受け取ることはできません。
このような場合、相続においてAさんの義母に対する貢献を主張することができるのでしょうか。

特別寄与料とは?

旧民法においては、介護など被相続人に対する貢献の対価を請求できるのは相続人のみでした。
上記ケースでは、介護に尽くしたAさんは相続財産を一切取得することができない一方で、介護に関与していない長女及び長男が法定相続分を取得するという不公平が生じていました。
 
そこで、公平な相続財産の分配を図るべく、令和元年改正後においては法定相続人以外の被相続人の親族でも「特別寄与料」を請求できるようになりました。(最高裁判所HPより「特別の寄与に関する処分調停」)

特別寄与料を請求するための要件は?

特別寄与料を請求するための要件が、以下の5項目あります。
  
1.被相続人の親族であり、相続人ではないこと
特別寄与料を請求できるのは、相続人以外の被相続人の親族(六親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族)です。相続放棄をした者、相続人の欠格事由に該当する者又は廃除により相続権を失った者は対象外です。
 
2.無償で療養看護その他の労務を提供したこと
 
①労務の提供
特別寄与料の対象となる主な寄与行為としては、療養看護(介護)や事業の手伝いが考えられます。
被相続人の財産管理によって財産の維持形成に寄与した場合(被相続人の賃貸不動産を管理することで管理費用の支出を免れた場合など)にも、労務の提供と評価される場合には特別寄与料の対象となり得ますが、被相続人の事業あるいは被相続人に対して財産上の利益を給付した場合は対象とならないと考えられます。
 
②無償性
介護などをしたことに対して、被相続人から対価を得ていた場合には、特別寄与料の請求は認められません。
 
3.被相続人の財産の維持又は増加
特別寄与者の行為により、同行為がなかったとすれば生じたはずの被相続人の財産減少や債務増加が阻止され、又は同行為がなかったとすれば、生じなかったはずの被相続人の財産増加や債務減少がもたらされたことが必要です。
 
4. 2 及び 3 の因果関係
療養看護や労務の提供と、財産の維持又は増加との間に因果関係が認められる必要があります。
例えば、上記Aさんが介護したことにより、ヘルパーを依頼するための費用を支出する必要がなくなった、という事情が必要です。
 
5.特別の寄与
 労務の提供をした者の貢献に報いるのが相当と認められる程度の顕著な貢献である必要があります。

特別寄与料の額はどのように決まるの?

まずは、特別寄与者(上記Aさん)と相続人(上記義母の長女及び長男)との間で、協議をします。
 
協議が調わず、又は協議をすることができないときには、特別寄与者は、家庭裁判所に対して、協議に代わる処分を請求することができます(民法1050条2項)。
 
家庭裁判所において特別寄与料の額を定める場合には、相続財産の額、特別の寄与の時期、方法及び程度、相続債務の額、遺言の内容、各相続人の遺留分、特別寄与者が生前に受けた利益、その他一切の事情が考慮されます(民法1050条3項)。
 
基本的には、寄与の態様に応じて下記のように計算されます。
  
◆療養看護型の場合
介護報酬相当額×療養看護の日数×裁量割合(平均数値0.7)
  
◆家事従業型の場合
(特別寄与者が得られたであろう給付額-被相続人から受けた生活費相当額)×特別の寄与の期間

いつまでに請求すればいいの? 相続税率は通常よりも高い?

特別寄与料を受け取る場合には、遺贈により相続財産を取得したことになり、相続税を納める必要があります(相続税法4条2項)。
   
特別寄与者は、本来の相続税額の2割加算の対象となりますので(相続税法18条1項)ご留意ください。
    
特別寄与料は、上記のとおり実際の寄与の期間や程度を始めとして個別事案ごとに大きく変わります。
特別寄与料を請求できるケースであるのか、どの程度の寄与料を請求できるのか、お困りの場合にはご相談にいらしてください。

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