法律コラム
教育資金の一括贈与制度って知っていますか?【人に聞けない相続】第12回
「資産を子どもや孫に渡したい」という場合に多く利用されているのが、教育資金の一括贈与制度。
この制度を使えば、1,500万円までは非課税で贈与することができます。
非課税枠が大きいため相続税対策としても有効ですが、一方で、細かなルールについても理解しておく必要が。
今回は、教育資金の一括贈与制度を注意点とともに解説します。
教育資金の一括贈与には、大きなメリットが
教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度(以下、「本制度」)は、祖父母や親などの直系尊属から信託などによって教育資金の一括贈与を受けた場合に、1,500万円を限度として、贈与税を非課税にできる制度です。
定められた条件を満たす場合に、金融機関の営業所等を経由して教育資金非課税申告書を提出することで適用されます。『一括贈与』と呼ばれていますが、必ずしも“一括で”贈与する必要はなく、限度額の範囲内で分割して贈与してもかまいません。
直系尊属からの贈与に限られるものの、非課税枠が大きいことから相続税対策における最大のメリットであるといえます。
節税対策としては、毎年110万円(贈与税の基礎控除額)を上限に暦年贈与する方法もありますが、被相続人がすでに高齢の方の場合、暦年贈与では年数がかかりすぎるケースもあります。この場合、本制度を活用すれば、まとまった金額を非課税で贈与できますから、非常に使い勝手がよいといえます。また、暦年贈与や相続時精算課税制度と併用することも可能です。
なお、本制度は税制改正によって一部内容が変更されることがあります。活用を検討する際は、改正の内容を確認しておくようにしましょう。
細かなルールに注意して、安易に利用しないこと
一方、本制度には注意すべき点もあります。
●適用期限付きの特例措置である
本制度は2021年3月31日までの特例措置で、2020年12月時点では、制度を2年延長(2023年3月31日まで)する方向で検討が進んでいます。いずれにしても、適用期限付きの特例措置であることには変わりありません。
●教育に関すること以外に使うことはできない
贈与された資金は教育資金として使う必要があり、用途を証明するために、領収書などの提出が求められます。もし教育に関すること以外にお金を使った場合は、本制度の対象とならず、贈与税が課税されることがあります。
●原則、30歳までに全額使い切る必要がある
もし30歳になった時点で使いきれなかった資金がある場合は、教育資金管理契約終了時点で贈与があったことと見なされ、贈与税がかかることがあります。
●贈与から3年以内に相続が発生すると、相続税の課税対象となることがある
教育資金の贈与開始から3年以内に贈与者が亡くなった場合、条件に該当すれば、贈与額のうち相続開始までに使いきれなかった分が、贈与者の相続財産に組み込まれます。
メリットが大きい反面、細かな条件もある本制度は、安易に活用すると、後々、子や孫が贈与税を負担することにもなりかねません。先を見越してベストな方法を見極めることが大切です。
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(こちらの記事は「相続・贈与マガジン:2021年4月号」より転載しています)
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