法律コラム
離婚を考えたら、整理すべき3つのポイント③お金【離婚への道】
春は出会いと別れの季節です。
子どもの進学・進級や新しいスタートの時期に合わせて離婚に進める方も多く、ご相談件数が増える時期です。まず「離婚」が頭によぎった時に次の3つのポイントから考えると、すっきり理解し、進めることができます。
①同意があるか・ないか ②子どものこと ③お金のこと
最終回は③お金について。一番気になる点でもあると思いますので、基本的な知識を備えておきましょう。
別居・調停中の場合は「婚姻費用」を請求できる
別居後、離婚までの間は、生活費である『婚姻費用』が請求できます。
「婚姻費用」とはあまり聞きなれない言葉かもしれませんが、要は、別居後・離婚までの一方の配偶者と未成熟の子が、通常の社会生活を維持するために必要な生活費のことです。離婚に関する話し合いや裁判の途中で別居していても、法律上は夫婦であるので、夫(もしくは妻)に対して生活費の請求ができます。
養育費と同様、家庭裁判所の裁判実務では、標準的な生活状況を基準に作成された婚姻費用算定表に基づいて決められることが多いです。
「請求した時」から認められることになっていますので、後になって過去の未払い分を請求するのは困難です。婚姻費用は離婚が決まるまで、もしくは再び同居するまで発生します。
「養育費」は実際どのぐらいになるのか?
離婚確定後、子どもの『養育費』が請求できます。
前回の記事でも触れましたが、こちらも家庭裁判所実務ではいわゆる養育費算定表を基準にして決められることが多いです。(裁判所のHP:平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告はこちら)
この「算定表」に基づいて計算すると、
例)年収夫600万円(給与収入)・妻100万円、3歳・6歳の子が2人の場合
=養育費は2人分で月額8~10万円(1人につき4~5万円)
思ったより低い金額なのが実状です。
なお、一度決めても事情が変わった場合に増額請求・減額請求が可能です。
夫婦間の「財産分与」とは
「財産分与」とは、婚姻後に形成された夫婦の共有財産を分配することです。
例えば、預貯金や共有不動産、保険など、それぞれの貢献度に応じて分配すべきこととされていますが、分与の割合は1/2ずつが基本です。
よく芸能人の離婚などで「慰謝料〇千万」みたいに報道されているのは、厳密な意味での「慰謝料」ではなく、「財産分与」としてのものであることが多いです。
財産分与は基本的には離婚原因とは関係なく、離婚に伴う夫婦間の財産関係の清算=清算的財産分与として行われます。ですから、不倫をして離婚の原因を作った妻からであっても、離婚について合意ができる以上は夫から財産分与を受け取ることも可能となります。
そのほか専業主婦や高齢者、もしくは病気の場合など、離婚により元配偶者が困窮する場合には、扶養的な意味での財産分与が認められる「扶養的財産分与」があります。また、慰謝料としての意味を含む「慰謝料的財産分与」もあります。
特に不動産を伴う財産分与については、計算の仕方で分与額が変わることも。また、お金によらずに「不動産を譲ってもらう」「居住権を認めてもらう」などさまざまな解決方法があります。
なお財産分与の請求には、離婚してから2年以内という期間制限があるので気をつけましょう。
退職金や年金分割はどうなる?
熟年離婚が増えてきた昨今、財産分与と関連し、この二つは今後の生活の糧になる場合が多いので要注意です。
退職金について分配を受けるには、支給が確実であると見込まれていることが必要になります。また、全額が対象ではなく婚姻期間に応じた金額が対象となります。
年金の分割は、婚姻期間中の『厚生年金の払込保険料』に応じて原則1/2の割合で分割することができます。
平成19年以降に結婚した方は「3号分割」により、3号被扶養者は一律2分の1の分割を受けることができます。これ以前の場合は「合意分割」により、当事者間の合意が必要になります。
年金分割をすると「将来、受け取る年金の半分がなくなる(もらえる)の?」と思う方も多いようですが、2階建ての年金の1階部分である『国民年金』や、3階部分である『厚生年金基金・国民年金基金』は対象外となります。また厚生年金部分についても、婚姻期間中の納付実績に対して分割するので、将来受け取る予定の年金の半分を分割するわけではないことに注意が必要です。
なお、年金受給資格が実際に発生するのは納付済期間が25年以上であることが必要ですので、せっかく分割したとしても、納付期間がそれ以上ないとそもそも受け取れないこともありますから注意しましょう。
年金分割の請求も離婚が成立してから2年までの期間制限にかかります。
慰謝料が請求できるのはどんな時?
相手方に不貞行為や暴力等があった場合に発生します。精神的苦痛を慰謝するための損害賠償ですので、離婚理由が「性格の不一致」「価値観の相違」などの場合は請求できません。
また不貞の慰謝料については、不貞相手にも同様に請求できます(ただし二重取りができるわけではありません)。
相手が不貞を否定した場合に裁判で慰謝料を認めてもらうには証拠が必要になります。
弁護士に相談すれば、証拠集めの段階から効果的なアドバイスがもらえます。
失敗しないためにもプロにご相談することをお勧めします。
なお、不貞による離婚に伴う慰謝料請求権の時効は離婚が成立してから3年間とされていますので注意が必要です。
離婚後の新しい生活のために、ここは冷静に
ほかにも「住宅ローンはどうなる?」「健康保険や医療保険は?」生活をする上で、お金にまつわる疑問はまだまだ出てきますよね。今は別れたい一心で、「無条件で離婚する…!」なんて考えてしまう方も多いと思いますが、ここは冷静になって一つひとつ、慎重に考えましょう。
また、離婚が成立してから養育費・財産分与・慰謝料などを請求できる期間は2~3年までと短く、「知らなかった!」では済まされません。それに、一度別れて疎遠になってからでは、お金の協議も困難になります。離婚成立時にきちんと取り決めできるように、いずれもプロにご相談されることをオススメします。
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この記事は2017年4月19日の記事を再構成しています
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