法律コラム
離婚時に父親が親権をとる、その理由とは【代表コラム】
ここ最近、著名なご夫婦が「父親を親権者として離婚」という報道が相次ぎました。
どうしてこういう話題がニュースとして取り上げられるのか、その背景には何があるのか、そもそも、父親が親権者となるというのは、どういうことなのか…。
長年、家事事件を取り扱っている中で、思うところを水谷弁護士につづってもらいました。
父親が親権者になるには2パターン
今の日本では、父母のどちらかを親権者と定めないと離婚をすることができません。
父が親権者となる時には、以下の2パターンがあります。
⑴実際に父が子供と同居して育てるという場合
⑵実際は母が同居するのだが、「親権」という観念だけを父のほうに置いておくといった場合
そもそも、親権とは大きく2種類があります。(詳しくはこちらのコラムを)
①子を養育監護する権利(監護権)
②その財産を管理する権利(財産管理権)
①監護権は、子の居場所を指定する「居所指定権」、②子を戒める「懲戒権(822条)」③未成年にアルバイトを許可する「職業許可権(823条)」から成り立っています。
②財産管理権は、子供名義の預貯金を親権者が出し入れしたり、生命保険の受取を子どもに代わって行うなどの行為がそれにあたります。
また、親権者は子にかわって法律行為を行う法定代理人となります。
親権と監護権が分かれることについて
親権のうち、「監護」つまり、一緒に住んで世話をする権利だけが、父母の同意で切り離され、「親権」と「監護権」とが分離することがあります。
それが上記の⑵実際は母が同居するけれど、「親権」という観念だけは父のほうに置いておくといった場合です。
実際は、母が不倫をしてしまい、父が自分に親権を残すことを条件として母が子を引き取るなどの場合や、海外留学などの事情でParental Right(親権)を経済力のある父のほうにしておき、実際の世話は母で行うといった場合があるように思いますが、家庭裁判所は、子どものためにならない(子の福祉に反する)として、親権と監護権の分離をすすめることはしません。
監護権分離は、あくまで本人たちが同意した場合限り、ということですね。
親権が取れるのは、どういう状況か
「親権」もあくまで父母の双方で協議して決めるのですが、これをめぐって対立してしまった場合には、
⑴これまでの監護状況
⑵子どもへの愛着・愛情
⑶経済力
⑷今後の生活環境
⑸子どもの意思
などを基準に、裁判所に決めてもらうことになることがあります。
父母の両方から「私/妻は経済力がないから、親権をとれないでしょうか」などと相談を受けることがありますが、実際はそんなことはなく、経済力だけで決まることはほとんどありません。
実際は、⑴すなわちこれまでどちらがどうやって主たる監護者として監護してきたのか、そして、それが今後も継続できるのか⑷が主な着眼点になります。
これまでの「母性優先の原則」の背景にあるもの
ひとむかし前は「母性優先の原則」などと言われましたが、乳呑み児でない限り、ママであることをもってのみ親権者が決まるものではなく、今までの監護状態に問題がない限り、それを継続するのが望ましい(継続性の原則)というほうが重要です。
それゆえ、やはりこれまで母の育児が7、8割方でした、などということになれば、引き続き母が親権者に定めることになる、というのが一般的であったものです。
一方で、夫婦共働きで、「父も母とほぼ同じように育児してきました」という場合には、もう甲乙つけがたい、といったことが生じるようになります。
芸能人同士のようなビッグカップルは、当然、父も母も仕事をしていますし、「母だけが全面的に育児を担っています」とはならないですから、父が親権者となって離婚に至ったというのも、頷ける帰結です。
親権のこれから
親権を争って裁判にまで至る場合は、その対立は熾烈なものになる場合もありますが、あくまで離婚する二人が同意できる場合で、そのことで今後のお子さんに不利益が生じない場合なら、当然、父・母のどちらを親権に定めてもOKなのです。
共同親権のことが話題になりやすい昨今ですが、日本で立法に至るかどうか、至るとしていつごろになるかはまだまだ不明です。それまでの間、芸能人カップルのように、父を親権者と定めた離婚の形も少しずつ増えてくるのかもしれません。
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