法律コラム
別居の時、子どもを連れて家を出るということ【離婚への道】第8回
離婚の二文字が頭をよぎった時、「今すぐ、家を出たい!」と思っても、子どもも一緒に連れ出ても問題ないのでしょうか。
このような質問をされることがよくあります。実は、なかなか難しい問題です。
特に、海外では子どもを連れて出ていくこと=「連れ去り」になるケースがほとんどなので、国際的なルール間で摩擦が生じてしまいます。(こちらの記事「共同親権(共同監護)のこと)」を参照)
今回は国内での婚姻関係の場合、家を出る時の子どものことについてお話ししたいと思います。
子どもを連れて出ても、日本では法的問題ないのか
今の日本では、離婚後どちらかの親が「単独親権」「単独監護権」を得ることになります。
ですから、結婚・同居中の共同監護の状態から、一方の親が子を連れて出ることが「連れ去り」として、法的に問題になるわけではありません。
両方が親権を望んでいる場合、同意なく子どもを連れて出るケースが多いのはこの理由からです。
しかし、父か母がすでに単独で子どもを監護するような状況で、他方がこれを突然、取り返す行為(例えば保育園や幼稚園から連れ去る、下校時に車に乗せるなど)は、「誘拐」とされてしまうことがあります。ここで大きな問題が生じてしまうのです。
別居に踏み切るのは自由ですが、あまりにも正当な理由がないまま別居した場合、助け合って同居する義務を放棄した「悪意の遺棄」と責められてしまう可能性もありますので、自分なりの理由をしっかりと相手に伝えておく方が得策でしょう。
相手が子どもと一緒に連れ出てしまったら…
現在の日本の家事法制では、これを法的にストップすることは容易ではありません。
ひとたび妻が子を連れて出てしまったら、「監護者の指定」「子の引き渡し」の請求を、家庭裁判所に申し立てることはできますが、この請求を認めてもらうのは難しいのが実状。
連れ去った相手が「監護に不適切である」ことを立証しなければならないのと、 子どもの親権者は「子どもの利益が最優先」ですが、同時に、「現状維持の原則」があり、「子どもが現在落ち着いて生活できているなら、その状況を尊重すべき」という考え方も影響するからです。
よって、子を連れて別居されてしまったら、多くの場合、子に相当回数の面会を求めることしかなす術がなくなることも大いにあります。
共同監護を法的な建前としない法制度の是非はありますが、まずは、十分な話し合いを重ね、相手が子を連れ出ることを防ぐことが、最重要課題というほかありません。
最も影響を受けるのは子どもであることを、忘れてはならない
苦しい思いで子どもを連れて出る親にもその親の理由がありますし、「連れ去られてしまった」と憤慨する親にも、またその苦しみがあります。
苦しい思いをして両親が一緒にいるよりは、たとえ親が一人になったとしても「親が笑っていることが、子どもにとっては一番いい」という意見も多くあります。
たしかに、そのような場合もありますが、ただそれだけで、子どもの生活の変化を正当化することはできません。
二人の親との生活から、一人の親との生活に変わる子どもの気持ちを、それぞれが忘れてはならないと私は思います。
また、離婚をめぐる言い争いの中では、「子」を求めて争う両親の思いが、子への愛情に基づいたものであると同時に、いつしか相手への「当てつけ」になることが多いにあります。
子の年齢や性別などにもよりますが、自らの意思によらずに突然生活の在り方が変わる子どもの気持ち、どんなときであっても、お互いを思いやってほしいと思います。
一つとして同じ離婚・同じ親子関係はありません
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*この記事は2018年8月25-15日の記事を再構成しています
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