法律コラム

スタートアップが陥りがちな三大株式失敗例とは?成功のための法的ポイントを解説

スタートアップが陥りがちな三大株式失敗例とは?成功のための法的ポイントを解説

2025.02.18

こんにちは、弁護士の藤間です。
  
近年、スタートアップの創業が活発になり、多くの起業家が新しいビジネスに挑戦しています。
 
しかし「法務の重要性を軽視したことで、成長の妨げになった」というケースは少なくありません。
 
スタートアップの成長ステージは事業の成長フェーズに合わせて「シード」「アーリー」「ミドル」「レイター」と表すことが一般的です。
  
しかし、シード期やアーリー期での株式に関する判断ミスは、後々大きな問題に発展する可能性があります。
 
本記事では、スタートアップが陥りがちな株式関連の失敗例と、その対策について、法的視点を交えて解説します。

失敗例①シード・アーリーステージで第三者に株式を割り当て過ぎる

スタートアップが成功するには「創業期の株式管理」が重要ですが、ここで致命的なミスとなるのが、シード期・アーリー期で第三者に株式を割り当て過ぎることです。
  
なぜ致命的なミスになってしまうのでしょうか?
  
まず、創業直後のスタートアップは、資金調達のためにエンジェル投資家やVC(ベンチャーキャピタル)からの資金を求めます。
   
しかし、この時期に過剰に株式を発行しすぎると、将来的に経営の自由度を失うリスク伴います。
  
例えば、以下のような状況は危険です。
 
•創業メンバーが過半数の株式を保有していない
→経営の意思決定権を失う
 
•後の資金調達時に希薄化しすぎてしまう
→追加投資が困難になる
 
•エンジェル投資家が過度に発言力を持つ
→創業者のビジョンが曲げられる
  
スタートアップは成長フェーズに伴い「投資ラウンド」と呼ばれる投資家がスタートアップ企業に投資をする際の投資フェーズがあります。
 
そのフェーズを「シリーズA」「シリーズB」「シリーズC」と表しますが、そこに合わせて資金調達を進めることが前提です。
 
初期段階で株式を過剰に発行してしまうと、将来のファイナンス戦略に悪影響を及ぼすことになりますので気をつけましょう。

「初期段階で株式を割り当て過ぎること」への対応策

それではどのように対策すべきでしょうか?
 
①シード期では株式発行を最小限にする
シードラウンドでは、エンジェル投資家や初期のVCからの投資を受ける際に、発行する株式をできるだけ抑えることが重要です。
  
特に、創業メンバーの持ち株比率を50%以上維持することが望ましいでしょう。
   
②転換社債型新株予約権を活用する
最近では、株式の希薄化を抑えつつ資金調達をする手段として、「転換社債型新株予約権(コンバーティブルノート)」が利用されています。
  
これは、一定条件を満たした場合にのみ株式に転換される仕組みで、初期段階の過剰な株式発行を回避できます。
    
③将来の資本政策を考えた発行計画を立てる
「いずれシリーズA、Bと資金調達を進める」という前提で、どのタイミングでどれくらいの株式を発行すべきか、資本政策を策定しておくことが重要です。

失敗例②初期の株式発行数が少ない

スタートアップの創業時、多くの起業家は 「とりあえず100株だけ発行しておこう」という考えを持ちがちです。しかし、これは将来的に大きな手間を生むリスクがあります。
  
•後々のストックオプション発行時に計算が面倒になる
   
•株式分割の手続きが必要になり、法務コストがかかる
  
•投資家への持ち株比率の調整がしづらくなる
  
例えば、100株しか発行していない場合、1%の持ち分を発行するには1株単位の調整が必要になります。
  
しかし、最初から10,000株発行しておけば、より細かい比率の調整が容易になります。

「初期の株式発行数が少ないこと」への対応策

それではどのように対策すべきでしょうか?
  
①最初から十分な株式数を発行する
一般的に、スタートアップの創業時には 「10,000株~100,000株」程度を発行 しておくのが良いとされています。こうすることで、将来の資本政策が柔軟に行えるようになります。
 
②ストックオプション発行の準備をする
ストックオプション(SO)は、スタートアップが優秀な人材を確保するために重要なツールです。
 
初期の株式数が少ないと、ストックオプションを発行する際の計算が煩雑になります。
  
あらかじめ適切な株式数を設定しておくことで、将来的な調整をスムーズにできます。

失敗例③創業メンバー間の株式比率が均等になっている

スタートアップの創業時、多くの創業者が「公平さ」を重視して、株式を均等に分配するケースがあります。
 
創業メンバー3人がそれぞれ33.3%の持ち株比率を持つという状況です。
 
なぜ「平等な持ち分比率」が問題なのでしょうか?これは後に以下のような問題を引き起こす可能性があります。

•意思決定がスムーズにできなくなる→3人が対立した場合、議論がまとまらず、重要な決定が進まない。

•リーダーシップが不明確になる→誰が最終決定権を持つのか不明瞭になり、企業の方向性が定まらない。
 
•創業者の一人が離脱した場合、株式の処理が複雑になる→事前に取り決めをしていないと、持ち株の買い取りや譲渡が問題になる。

「株式比率が均等になっていること」への対応策

それではどのように対策すべきでしょうか?
 
①意思決定のために「主要株主」を設定する
創業メンバーの中で、CEO(経営責任者)が51%以上の株式を持つ形にする ことで、経営の安定性を確保できます。
 
②ベスティング(Vesting)を設定する
創業メンバーの株式を「時間をかけて確定する仕組み(Vesting)」にすることで、途中で離脱したメンバーが持ち株を持ち逃げするリスクを防げます。
 
③創業合意書(Founders’ Agreement)を作成する
あらかじめ創業メンバー間で、「誰がどの役割を担うのか」「意思決定のルールはどうするのか」を明確にする契約を結んでおくと、後々のトラブルを防ぐことができます。

スタートアップの成長には「株式管理のルール」が重要

スタートアップの成長には、資金調達や経営戦略と同じくらい、株式管理のルールが重要です。
 
⚫︎初期の株式発行は慎重に
  
⚫︎十分な株式数を発行しておく
  
⚫︎創業メンバーの持ち分を適切に設定する
  
これらのポイントを押さえて、スタートアップの成功を目指しましょう。

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