法律コラム
「都市農地貸借円滑化法」施行後の現状の課題とは【身近なところのニュース法律解説】
弁護士の藤間です。
世の中で注目されている時事問題のうち、企業様の関心が高いトピックについて、法律に関わる部分を解説したいと思います。
2018年9月に都市農地の賃借の円滑化に関する法律「都市農地貸借円滑化法」が可決されました。
それに伴い、従来は貸すことが難しいとされていた生産緑地の貸借が実際に始まり、実際に東京都では令和5年12月末時点で累計約300件の貸借契約が成立しています。
この数字から、生産緑地の流動化が進み始めたと感じる方もいるかもしれません。
しかし、注意すべきは、その85%以上が使用貸借契約である点です。
さらに、多くの場合、契約期間中でも農地所有者が死亡した際には契約を解除できる特約が付けられていると推測されます。
このような特約付きの使用貸借契約が、新たな課題を生んでいるのです。今回はその課題について解説したいと思います。
農地における賃貸借と使用貸借の違い
農地の賃貸借契約では、借主が死亡した場合でも契約は終了せず、相続人がその地位を引き継ぐことが法定されています(農地法18条7項、8項)。
また、貸主が死亡しても特約によって、契約を解除することは無効となります。
これに対し、所有者が死亡した際に農地を売却するためには、使用貸借契約のように解除特約を設けることが現実的な対応となります。
しかし、賃貸借契約ではそのような特約を設定することはできません。
借主の視点から見た課題
使用貸借契約において、所有者の死亡時に契約を解除できる特約がある場合、借主は突如として農業生産の基盤を失うリスクに直面します。
特に、体験農園などのシーズン途中で契約が終了する可能性がある場合、利用者の理解を得るのは困難でしょう。
このような状況は、借主にとって非常に不安定な環境をもたらします。
現状における最善策ち今後の展望
現在の法的環境においては、所有者が相続発生時に解除を条件とする契約を結ぶことができないため、賃貸借契約の期間を可能な限り短く設定することが最善の策となります。
一般的には2年程度が目安となりますが、その期間中に相続が発生した場合、所有者は残りの契約期間についてリスクを甘受するほかありません。
借主もまた、所有者の死亡時に契約更新が見込めなくなるリスクを認識しておく必要があります。
このリスクを明確にするため、契約書には確認事項として記載しておくことが、将来的な紛争を予防する一つの方法となります。
さらに、東京都では10年以上の長期賃貸借契約を締結した生産緑地所有者に対して奨励金を支給する制度があります。
しかし、この奨励金が、相続時に生産緑地を売却せざるを得ない所有者にとって大きな助けとなるかどうかは疑問です。
都市農業の維持は食料自給率の向上に直結します。
生産緑地の所有者と借主にとって、より使い勝手の良い法的手法が求められています。
当職としても、これらの課題を解決するための活動を引き続き行っていきたいと考えています。
(参考資料:一般社団法人 東京都農業会議HPより「生産緑地の賃借が進んでいます」
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