法律コラム
ビッグモーター社の会社再建について【身近なところのM&Aニュース解説】
パートナー弁護士の藤間です。企業顧問や事業継承を専門としております。
M&Aとは、Merger(合併)&Acquisition(吸収)の略。M&Aといえば聞こえはいいけれど、実際どんなことがどのように行われているのかわかりづらい… 。
そこで、身近なニュースからM&Aについて、紐解いてみましょう。
ビッグモータ―社が、「事業譲渡」の手法で会社再建を行うことが報じられました。 (関連記事参照:ビッグモーター社事件で感じる違和感と、刑事・民事の責任の所在とは【代表コラム】)
譲渡先は判明していませんが、デロイト トーマツが関与して、売却の交渉がすすめられているそうです。
具体的には、デロイト トーマツ子会社のデロイト トーマツ ファイナンシャル アドバイザリーが再生計画の策定に入ったとか。
同社はM&Aアドバイザリー、デューディリジェンス、バリュエーションなどのM&A関連業務で強みを発揮するフィナンシャル・アドバイザリー・サービス(FAS)を手がけている会社です。
ビッグモータ―社といえば、信用失墜でその売上も急激に減少しているはず。
一方で、資金注入をこんな会社を買う会社はあるのでしょうか…?
また、この規模の会社でなくても、売上が芳しくない会社でも事業を売却することはできるのでしょうか…?
今回のビッグモーター社「事業譲渡」の最大のポイント
「事業」の譲渡とは、「一定の目的のために組織された有機的一体として機能する財産」を譲渡すること。分かり易くすると
①動産などの財産及び
②組織されている事業(ビッグモーターの例でいうと、中古車販売業に関するノウハウや組織運営そのものなど)
「株式」の譲渡では、対象となる法人の支配権である株式を譲渡することになりますが、これとは異なり、会社の価値や支配権そのものが包括的に移転することでもなければ、「財産」の譲渡と異なり、個々の工場、在庫といった不動産、動産がそれぞれ個別に譲渡され所有権が移転することでもありません。
ちょっとわかりづらいですが、最大のポイントは「譲受先に(合意しない限り)債務が引き継がれない」という点です。
今回の一連の事件で会社そのものが負うことになる損害賠償債務・責任については、引き続きビッグモータ―社が負う。
中古車販売事業なら中古車販売事業、自動車修理事業なら自動車修理事業、それぞれを買いうけた譲渡先は、その顧客リスト・ノウハウ・スタッフなどを引き継いで、そこから自ら利益を上げることができるようになります。
従業員との雇用関係や、工場・オフィスといった箱ものの所有権・賃借権などは、個別にどれを移転するかを決めることになります。
中古車販売業界の売上のうち、ビッグモータ―の売上は業界トップの6000億円弱であったとも伝えられています。
財務内容が明らかにされていないので詳細な判断は難しいですが、中古車の在庫や自社所有の店舗などの資産があること、また、信用は一定程度落ちたとはいえ、仕入先・顧客・ノウハウ・店舗など、負債を引き継がない形でこれらを生み出す事業を安く買い取れるとしたら、買い取れる側にとってもよいビジネスとなる可能性があるということです。
譲渡価格はどのように算定されるのか
会社の譲渡価格を算定するには主に三つの方式があります。
1.コストアプローチ
純資産や過去3年間の営業利益の平均値から、3~5年分に相当する営業権(のれん代)などを参考にする
2.マーケットアプローチ
利益やEBITDA、純資産といった財務指標から、算出された倍率で計算する類似会社比較法(マルチプル法)
3.インカムアプローチ
フリーキャッシュフローを割引率により現在の価格に割り戻し、事業価値を求めるDCF法
ビッグモーターの場合には詳細な財務状況が明らかでないので、今後事業譲渡が進んでいった際に、最終的にいくらで譲渡となるか、今後も注目していこうと思います。
さて、ビッグモーター程の規模でなくても、いかなる会社においても事業譲渡を行う場合に専門家の関与は必須となります。
中小企業の現場においては、仲間内やお知り合いの方のご紹介にて、事業譲渡を行うことが多いかと思いますが、その場合でもしっかりとリスクを顕出して対応することが必要となります。
また、現状において事業譲渡を検討していなくても、売上が立っていない事業や法人を売却して、主たる事業または新規事業に投資をするキャッシュを蓄えたいという希望や、事業を買い取る際にその価格が適切なのか分からないという場合には、経験豊富な、当事務所に気軽にご相談ください。
企業価格の算定にあたっては会計士の先生と協働して、法的にもリスクを顕出、対応しながら事業譲渡を進めることができます。
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