法律コラム
持ち家がない人が不動産を相続すると、相続税が大幅に減少…?【人に聞け相続】第3回
相続人の人数に合わせて均等に資産を相続することよりも、1人が資産を相続してから代償分割する方が節税できる場合があります。小規模宅地の特例、今回は3億円の不動産を3姉妹で相続することになった事例を元に紹介します。
3億円の不動産を3姉妹で 均等に相続することに
東京の一等地に戸建て住宅を保有する一家がありました。この一家の家族構成は、父と母の間に長女、次女、三女の三姉妹がいます。父は5年前に他界しており、その際は母親が自宅の土地と建物を100%相続しています。相続財産は自宅しかなく、評価額は路線価に基づく自用地としての原則評価で約3億円でした。そして昨年には母が亡くなりました。長女も次女もそれぞれ結婚して持ち家があり、三女だけが母親の近くの賃貸マンションに住んでおり持ち家を所有していません。母の生前から自宅は姉妹で均等に3等分するという了解事項がありましたが、三女が実家に対する思い入れが最も強く、「私が実家の不動産を相続したい」と言い出しました。長女も次女も三女が自宅を相続すること自体に反対ではありませんでしたが、3億円の不動産を相続するなら、その見返りとして他の姉妹に1 億円ずつを支払うこと、つまり代償分割が条件となります。しかし三女には2億円を支払う能力がありません。結局共有で相続して直ぐに売却 し、売却代金を均等に分けてこの相続は無事に終了しました。この事例、実は3人で自宅を相続するよりも、三女のみが相続した方が相続税を抑えることができたのです。それはどうしてでしょうか?
「小規模宅地の特例」で 評価額を80%下げられた
三女は唯一“持ち家を持たない”ので、「小規模宅地の特例」が適用されます。小規模宅地の特例とは、被相続人や生活を共にする家族(同一生計親族)の事業用や居住用の宅地について、宅地の評価額を減額できるというものです。本制度は被相続人が 亡くなった後の遺族の生活に大きな支障が生じてしまうことを防ぐために設けられました。居住用の場合であれば330㎡までは80%減額されるので、今回の事例だと3億円の評価額を6,000万円まで下げられます。
では今回の事例に当てはめて、小規模宅地の特例を受ける方法を具体的に見ていきます。まず、分割協議書上で三女が単独で実家の土地建物を相続します。その上で特例の適用を受けられるよう、相続税の申告期限まではその土地を保有し、申告期限後に売却するのです。分割協議書には、売却代金を三女の譲渡税控除後の金額で3等分する旨を記載しておけばいいのです。小規模宅地の特例が適用されるには申告期限まで必ず土地を保有しておかなければいけません。これは必ず守るようにしてください。
平成31年度の税制改正での変更点
平成31年度の税制改正により相続開始前3年以内に事業用に使われ始めた土地は特定事業用宅地等に対する小規模宅地等の特例の対象外となりました。これまでは亡くなる直前に事業用に使い始めたとしても小規模宅地等の特例が適用されましたが、税制改正後は亡くなる前3年以内に事業用に使い始めた場合は小規模宅地等の特例が適用されません。
ただし、土地の上の事業用の減価償却資産が土地価額の15%以上である場合、相続開始前3年以内に事業用に使われ始めた土地であっても小規模宅地等の特例が適用されます。
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