法律コラム

【ショートストーリー相続編】法定相続人~後妻とその子どもたち~②

【ショートストーリー相続編】法定相続人~後妻とその子どもたち~②

2020.03.18

法的な解決だけでは終われないドラマがある。

一見、書類だけでは無機質に思える裁判結果にも、その背景には様々な人生模様が隠されているのです。
当事務所の水谷が日々扱う事例を取材し、それを元にフィクションでショートストーリーを作成しました。
関係を持ちたくない後妻の家族と、改めて相続について話し合わなければならなくなったすみれ。
どうすれば自分の感情と、もっとも近い形で解決できるのか…。

セカンドオピニオンで気づく、自分の心の内

水谷弁護士は続けた。

「相続の手段の一つに、代償分割というものがあります。
誰かに不動産を取らせて、価格のアンバランスをお金で調整するのです。
事業用不動産は複数人で維持管理するのは大変ですから、
キャッシュが十分ならそれが最適かと。
いわば『寄せて分ける』のです。」

「そうですか。ちょっと一度、考えさせてください。」
そう言って弁護士事務所を後にした。

学生時代の友人が、弁護士事務所で働いていることを思い出した。
その友人の意見も聞いてみたい。
連絡すると、「事務所の先生に相談した方が良い」とアドバイスをくれ
早速アポを取ってくれた。

後日、その友人の働く弁護士事務所に訪れた。
そこの年配の男性先生曰く、
「相続はね、お金も不動産も全て均等に分割すべきというのが民法の定めです。
きっちり分けるなら等分に分けるべきです。
誰かの手に渡すのは、あとあと後悔することになるかもしれませんよ。
それだったらビジネスとして考えて、
あちらのご家族と一緒に受け継げばいいじゃないですか」

この人の言っていることは間違ってはいない。
正論なのかもしれない。妥当な見解だろう。

でも、不動産のために、あの家族とのやりとりが永久に続くなんて。
私の気持ちはやっぱり相容れない。
同じ説明をしたはずなのだが、こうも弁護士によって考え方が違うものなのか…。
友人には悪いが、もう気持ちは決まっていた。

改めて、用賀の水谷弁護士に連絡を取った。

「先生、やはり私はもうこの関係を終わりにしたいのです。
しがらみを残したくないのです。
だから『代償分割』という方法で、先方に提案してもらえませんか?」

「わかりました。ではその旨を伝え、遺産分割協議の手続きをとりますね。
少し長引くかもしれませんよ。
それから、代償金については一定の譲歩は免れません。
それは覚悟の上でお願いします」

「わかりました。」
これで終わってくれるなら、今は耐えるしかない。(続く)

【もっとよくわかる!法律用語解説】
遺産分割協議
「相続財産をどのように分けるか」を、相続人全員で話し合って決めること。
被相続人(亡くなった方)が自筆遺言証書を残していれば、原則、それに従い遺産を相続するが、今回のように遺言書が無かった場合、被相続人が亡くなった瞬間に相続人全員が法定相続分の割合で共有していることになる。この遺産分割協議で全員が合意できなかった場合は、家庭裁判所で遺産分割調停することになる。ちなみに相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10ヶ月)までに、遺産分割協議が成立しないと、相続税の諸々の軽減措置が受けられなくなることがあるので注意。

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