法律コラム
【ショートストーリー離婚編】慰謝料なんていらない②
おはようございます。前回から始まりました法律ショートストーリー「慰謝料なんていらない」。
半年間、出て行ったきり音信不通の旦那をみかねて離婚を決意。「慰謝料はいらないので、夫名義のマンションをもらいたいのですが」と世田谷の法律事務所に相談に来られました…。
「彼が出て行ってからの半年間、誰にも相談できずにいました。そのかわり、一人でじっくり考え抜いた結果なので二言はありません。不貞で慰謝料なんて、出たとしてもたかが200~300万ぐらいのことでしょう。そんなお金もらっても仕方ないですし、愛犬たちと変わらず住める場所さえこのまま保証してもらえれば、それだけでよいのです。まして銀行員が取引先の女性と…なんてことがバレればすぐ地方に出向でしょうし、もともと出世街道からは外れていましたけど。この先どうするのでしょうね。私が知ったことではないです。」
「そうでしたか…お一人で悩まれたこの半年間、本当に大変でしたね。まず、実務的なことから申しますと、財産分与は通常2分の1ずつなので、ご主人が悪いからといって不動産の全部を当然に貰えるというわけではありません。とはいえ、交渉次第では名義ごと変更することも可能かと思われますが…もう少し詳しくお話聞かせていただけますか?」
物腰の柔らかな口調だが、とても芯の強そうな女性弁護士だと思った。
「はい、主人は転勤族でしたが20年前に都内に2LDKのマンションを4000万で購入しました。地方に転勤で数年あける際には人に貸し、5年ほどで東京に戻ってまいりましたのでこちらに住んでいます。今まで散々転勤生活でしたので、これからは私の両親のお墓からも遠くない、この地で過ごしたいと思っています。あと300万ほどローンは残っています。」
「なるほど。ローンが残っている場合、ご主人のローンを残したまま不動産をもらい受けることを銀行はよしとしないので、ローンごと引き受けるか、ローンを相手側又はご親族などの援助者に完済してもらうか…が選択肢になりますが。」
「最悪、300万ぐらいなら私がどうにかします。パートからでも薬剤師の仕事に復帰するつもりです。」
「そうですか。わかりました。まだご主人とは一度もお話になられていないようですが…もう一度、ご自分でご本人と話し合いの場を持たれますか?」
「いえ、この半年間、何度も相談を持ちかけましたし、話をしたい意向も伝えてきましたが、一切返事はありませんでした。主人の性格を考えても、今更どの顔下げていけば良いのかわからないのでしょう。もう、先生から主人に通知を送っていただいて結構です。」
彼女と話して行くと自分の頭の中が整理され、離婚への意思がますます強くなっていくのがわかった。
法律用語解説:財産分与
婚姻後に形成された共有財産を離婚時に2分の1ずつ分けること。金銭のみならず、保険、不動産、車両などに及ぶが、婚姻中に形成された財産である限り、その名義が夫婦のいずれであるかは問わない。
人と相談しているといろいろと整理されていくことがありますよね。言葉を口にすることで、相談者の意思は固まっていったようです。それでは、熟年夫婦はどのような結末を迎えるのでしょうか。次週もお楽しみに!
ご予約・お問い合わせ
「ご相談者様の明日の幸せのために」
「人生に寄り添った仕事がしたい」
そんな熱い思いを胸に全力を尽くして取り組んでおりますので、
まずはお気軽にご相談くださいませ。