法律コラム

【ショートストーリー離婚編】養育費増額請求調停

【ショートストーリー離婚編】養育費増額請求調停

2017.05.24

こんにちは!今週も新しいショートストーリーをご紹介します。
 
こちらは当事務所で取り扱いのある事例を元に、フィクションで物語を作成しています。
無機質に思える裁判の裏側には、人それぞれの人生模様が本当にあります。
それに寄り添ってきたからこそ、伝えたいことがあるのです。
 
今日は離婚時に取り決められる「養育費増額請求」のお話です。
 
今年で40歳になる主人が半年ほど前からだろうか、急におしゃれになった。
見たことのないカフスボタン。見たことのないカラーシャツ。
それまでブランドものなどあまり興味がなかったのに、急にイタリア製のアイテムが少しずつ増えた。
 
聞けば、商売がうまくいっていて、取り引き先が増えたとか。
親が経営する地元の小さな会社で、次男である主人は営業部門を担当していた。
少し商売の羽振りがよくなれば、それがそのまま月々の収支に影響する。
卵が先か鶏が先なのかはわからないけれど、どうやら主人が突然派手になったのと、女の影がちらつき始めたのはその頃だった。
 
最初はビジネスパートナーなのかもしれない、と思っていた。
「仕事だ」と出ていく週末も、確かに仕事はあるようだったが…きまって帰りは明け方か、翌日の夜。
でもそこは自営業の妻。
「仕事に反映されているのならいいか」と黙認していたが、次第に家族で過ごす休日に出かけられ、その度に多額のお金を持ち出されることに憤りを覚え、夫婦のすれ違いは進む一方だった。
 
 
私は主人の会社には役員登記もしていなければ、従業員でもなかった。
ところがある日、主人の会社の決算期前の会議に、主人が大事なUSBを忘れて行った。
「至急持ってきてほしい」と言われ、そのUSBを持って会社に走った。
経理だという小柄な女性に挨拶をされたが、何だろう、ピンとくるものがあった。
 
この人だ。
 
ここ半年おかしかったのは、そういうことだったのか。
経理は少し前まで年配の女性だった。彼女はどこに行ったのだろうか。
主人が次第に家に帰らなくなり、急に離婚届が送りつけられてきたのは、それから1年後のことだった。

こんなにもあっさりと家族を捨て、出て行った主人とはもうやっていけない。離婚には応じるつもりでいた。
それでも2人の子どもを育てていかなければならないのと、今までの生活水準がある。
離婚の際には養育費だけはきっちり決めておきたかったので、ある弁護士事務所を訪れた。
 
弁護士に依頼し主人と交渉を進めてもらうと、主人にもすぐ弁護士がついた。
しかしどうした訳か、弁護士を通じて通達された養育費は「2人で月額6万円」という金額だった。
養育費算定表を基準にしたものだそうだが、ありえない…!
主人は少なくとも年収2千万以上はもらっていたはず。
「どういうことでしょうか?何かの間違いですか? 全く理解できません!」
 
話し合いは決裂し、まもなく調停になった。
調停で目にした主人の収入資料を見て驚いた。
 
年収300万円。
 
よく考えたら、源泉徴収票を作るのは主人とあの女性だ。大企業と違って何らの客観性もあったものではない。実態と全く違う源泉徴収票が提出されていたのだ。
 
私たち家族をどうやったらこんな風に切り捨てられるのか、理解が全くできなかった。
これはあの女の入れ知恵か…
半年前までは普通に仲の良い家族だったし、夫婦関係はマンネリだったかもしれないが、家族としては普通に幸せな日々だった。それがどうして。今までの家族との時間はなんだったの…。
もう怒りを通り越して、哀しみしか残らなかった。
 
「家族経営というだけあって年収なんていくらでも操作できますが、源泉徴収票がこうだとなると…これは源泉徴収票が操作されたものだ、ということを証明できなくてはなりません。そのためには優花さん、あなたの協力が必要です」
 
上場企業ではないし、私は役員でもないから決算資料は手に入らない。
思い当たるのはあのUSBだ。家の主人のPCに元データがあるのではないか?
主人が出て行ってから誰も触らなかったPCを立ち上げ「kessan」とあるフォルダをそのままコピーし、弁護士に渡した。

次の調停でこれを裁判所に提出したところ、主人側の態度が急変した。
「その決算書にある役員報酬額は暫定値で、確定値ではない」と言っていたそうだが月々の振り込み、主人の車、息子たちの私学の学費など、うちには収入があったことを説明するうち主人側は「和解案として月々20万円を支払う」と言ってきたのだ。
 
十分とは思えなかったが弁護士のアドバイスを受け、高校・大学入学時一時金を提案して受諾させ、調停は事実上私たちの勝ちに終わった。
 
経理の女性との関係を証明することはできなかったが、子ども達にまともな金額を確保できたことで安心し、私はこの件を終わらせることにした。(終わり)
 
 
いかがでしたか?
世田谷用賀法律事務所で取り扱う事案から着想を得たフィクションです。
当事務所では、離婚及びこれに付随する婚姻費用や養育費についての争い事にも広く対応しております。
 
不安なお悩みをお持ちの方、いつでもお気軽にご相談ください。

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