ブログ

【ショートストーリー離婚編】不貞相手慰謝料請求裁判

【ショートストーリー離婚編】不貞相手慰謝料請求裁判

2017.05.15

先週からはじまりましたショートストーリー。
こちらは当事務所で取り扱いのある事例を元に、フィクションでストーリーを作成しています。
無機質に思える裁判の裏側には、人それぞれの人生模様があります。
今日は不貞相手に対する慰謝料請求のお話です。
 
解決だけでは終われないドラマがある
ショートストーリー 法律の向こう側

不貞相手に対する慰謝料請求裁判

二人目の里帰り出産から戻ってきた時だった。
何か違う。いつものリビングだが、この居心地の悪さと言ったら。
ここ1ヶ月ほど、夫が一人で家事をこなしていたせいか。でも男性の割にはとても几帳面で掃除も上手なはず。
 
特にあの窓辺に置いてある観葉植物用の水差し。夫の配置でもない。
あんな角度でだらしなく置かれるはずがない。
 
 
あぁ、また再発したのか。
二人目ができた時にはもう終わってくれるかと思ったけれど、やはり甘かった。
 
一人目の出産前後もなんだか心がざわついたのをよく覚えている。決定打があったわけではないが、この居心地の悪さは3年前と同じだ。
日常の様々な疑惑が確信に変わった途端、自分の中の感情が一気になくなってしまった。
 
長女を久々の保育園に預け、そのまま、知人の紹介で以前から聞いていた用賀の弁護士事務所へ向かった。

主人とは学生時代、同じサークルの私が先輩で主人が3歳後輩。卒業後も時々顔を合わせるうちに付き合うようになった。姉さん女房ということもあり、私が20代最後の誕生日に結婚し、すぐに長女が生まれた。主人はもともと人あたりが良い性格で、悪く言えば誰にでも優しかった。
 
「一度だけ、一人目の子を妊娠している時に、主人の会社主催のバーベキューに行ったことがあるんです。その時にわざわざ妊婦の私に挨拶にきた派遣社員の女の人がいました。『里帰り出産なさるんですってね。ご主人寂しいでしょうね…』私と同年代か、少し上の女性。年甲斐にもなく派手で甘いしゃべり方だったのでよく覚えています。多分その人だと思います」
 
弁護士の事務所で、自分でも驚くぐらい冷静に語り始めていた。
もうどこかで分かっていたこと。頭の中で幾度となく思っていたことを言語化したまでだ。
「できることなら離婚はしたくないんです。二人目も生まれたばかりですし。この子たちが大きくなるまでは離婚はしません。ただ、あの人にはそれなりの代償を払ってもらいたい」
 
弁護士は言った。
「不倫相手への慰謝料請求をおこしたい、ということですね。通常、別れていない中での不倫の慰謝料はそれほど取れないのが実情です。おそらく100万前後かと。それにご自身がいかに精神的苦痛を受けたか、相手がどんな不法行為をしたかがしっかり証明されなくてはなりません。確実な証拠などはお持ちですか?」
 
「それはどうにかなると思います。主人のことですし大抵のことはわかります。後日持参します」

夕方、主人も早くに帰ってきて、新しく4人の生活が始まった。
子煩悩な主人は、次女の誕生もとても喜んでくれた。それに二人目ともなると、オムツ替えやお風呂の入れ方も手馴れたものだ。家事、育児に追われながらもみんなで幸せな時間…のはずだった。
 
私がもう少し抜けていれば気づかなかったのだ、と思う。水差しの場所一つで悟ってしまう、こんな自分を恨む。
 
夫がお風呂に入っている間にスマホを開けようとしたが、指紋認証のため開かず。しかし、最近買い換えたばかりなので、前の携帯が机の引き出しの奥底にあったことを思い出した。それにはSDカードがそのままの状態だったので、そのカードごと抜き去り、自分の手帳の間に挟んだ。中身など見なくても分かっていた。必ず主人ならその情事を残すはずだ。
 
後日、弁護士事務所を訪れた。
「先生、確認してください。中身は見ていませんが、必ずありますから」
 
弁護士がSDカードの中身を確認したところ、それはもう目も当てられない画像だらけであった。
 
「結花さん、これだけあれば十分です。このまま調停に証拠として提出できます。でも本当によろしいですか? この裁判を起こすことで、ご主人が戻ってこなくなるかもしれませんよ。それでも不貞相手に請求しますか?」
 
「はい、結構です。お願いします」

簡易裁判所の民事調停を申し立てて以来、主人は家に帰ってこなくなった。子どもたちが頼みの綱だったが、それも効かなかった。それも心のどこかでは思っていたが、こうもあっさりとは。
 
 
結局、十分すぎる証拠のおかげで、精神的損害の賠償200万の支払い命令が出た。しかし、その相手の経済状況から月々5万円の40回分割払いという結果に終わった。そして、その結果に憤慨した不貞相手は派遣先を替え、あっさりと主人を捨てた。
 
 
慰謝料がどうとか、金額が、支払いがなんてもうどうでもいい。もうこんな茶番に巻き込まれたくない。ただ、その一心だった。ずっと目を背けていたことから向き合えた、それだけでいい。長女と生まれたばかりの次女と3人で強く生きていこう。
 
そう誓ってた矢先…、突然、申し訳なさそうに夫が帰ってきた。
子どもたちにどうしても会いたかったようだ。
 
私は何事もなかったかのように、いつものように出迎えた。「お帰りなさい」

いかがでしたか? 
裁判結果だけでは言い表せない、人生模様がたくさんあります。
またご感想などもおまちしております! では次週もお楽しみに!

ご予約・お問い合わせ

「ご相談者様の明日の幸せのために」
「人生に寄り添った仕事がしたい」
そんな熱い思いを胸に全力を尽くして取り組んでおりますので、
まずはお気軽にご相談くださいませ。