法律コラム

「共同親権」導入に向けて、法制審議会にて一歩前進【代表コラム】

「共同親権」導入に向けて、法制審議会にて一歩前進【代表コラム】

2023.09.07

代表弁護士の水谷です。
世の中で注目されている時事問題について、法律に関わる部分で解説したいと思います。
   
2023年8月29日に行われたにて、法務省は「共同親権」導入にむけ一歩前進しました。
 
具体的には、
・離婚後の親権者を父母またはその一方とすること(つまり、共同親権でも単独親権でもOK)
・協議がまとまらない場合には家庭裁判所でこれを決定できる
・その後も家庭裁判所の判断があれば変更できるようにする
・引き続き、離婚前でも虐待などの窮迫の事情があるときは、単独親権を認めるもの
・共同親権の場合でも、日常のめんどうをみる「監護者」となる側が定まり、その判断は優先される
 
という具体的な案を示したのです。
 
最近、特に報道もさかんなことから、ご相談者様などからは、「すぐにでも導入される」ということを前提に、離婚にあたって共同親権を前提とした取り決めをしようとする夫婦は少なくありません。
 
導入時期を踏まえて、すこし考えたいと思います。

共同親権導入に向けた今回の案のポイント

今回の案のポイント①は、「絶対的共同親権」ではないということ。
つまり、一方の親にNG事情があるときは、「単独親権」の制度を残した点です。
 
もともと、共同親権の導入に対しては、日本ではむしろ反対の意見のほうが多かったそうです。
虐待などのケースをどうするのか、ということが主な懸念だったことが反映されているようです。
 
ポイント②は、結局「(主たる)監護者」を決め、「そちらの判断を優先する」となっている点です。
実際にどちらかの親の元での生活がメインになりがち、その親の判断を優先せざるを得ない…ということで、この点では今の制度とほとんど変わりません。
 
共同親権を導入している諸外国も、これは同様のようです。
 
これを前提として、
・離婚前に子どもを片方が連れて出ること(連れ去り)を原則OKとする現状を、どう見直すのか?
・離れて暮らす親の面会頻度がどのように見直されるか?
  
これらの課題に対しては、依然として明らかでありません。

いつから「共同親権」になるのか

では、この共同親権はいつ頃導入されるのでしょうか。
 
共同親権の導入にあたっては、2021年3月からこれまで30回の「法制審議会家族法制部会」が開催されてきました。
今回はその30回目で、導入を前提とした具体案が示されたことになります。
 
債権法改正のときは、2006年10月に法務省に「検討委員会」が設置され、2009年11月に第1回の法制審議会の「民法(債権関係)部会」が開催され、2015年2月まで検討が進みました。
法改正が成立したのが2017年5月。
実際に、改正債権法が施行されたのは、2020年4月でした。
つまり、施行、つまり実際に導入されるまで第1回の法制審議会からは実に11年が必要だったわけです。
 
相続法改正のときは、法制審議会の「民法(相続関係)部会」の第1回開催は2015年。
部会は26回開催され、法改正が実現したのが2018年。
改正が施行されたのが2020年4月からでしたので、第1回の法制審議会から施行までには5年程度だったことになります。
 
共同親権をめぐる家族法改正については、第1回の法制審からまだ2年とちょっとですから、実際に法案が「成立」して、かつ「導入(施行)」となるにはもう少し時間がかかるのではないかという気がしています。

今、親権をめぐって話し合いをされている方々へ

現在離婚協議中の方の中に、「共同親権まで離婚を待とう」とか「共同親権を前提として取り決めをしよう」という方は少なくありません。
 
まだ幼児期のお子さんの場合には、いずれ共同親権が導入されれば、共同親権を前提とした離婚時の取り決めがなされるかもしれません。
  
18歳で成人になりますと、親権の定めは意味をもたなくなりますから、学童期のお子さんの場合には、実際に導入されるころには、成人している、なんてことにもなりかねません。
 
また、共同親権導入後、これまでに離婚が成立した方についてさかのぼって適用できるようにするのかどうかは未だ明らかにされていません。
実際は家庭裁判所がパンクしますから、遡って適用されることは考えづらそうにも思えます。
 
今離婚協議をされている方は、やはり、現在の法制度を前提として話合いをしつつ、
「あくまで、親権は観念的なもの。親としての権利、義務は同じ。日常どちらが多く監護するかを考えながら、その限りで主となる監護者を優先しつつ、できる限り子どもに対して対等な結論をめざす」
というほうが、現実的なのかもしれません。
 
とはいえ、共同親権導入への「検討」ではなく、導入に向けた具体案が示され、大きく前進したことは確かなようです。引き続き目が離せません。

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