法律コラム
「テラスハウス」の事案にみる、名誉棄損と侮辱について【代表コラム】
母の件は「名誉棄損」罪、娘の件は「侮辱」罪に
先日、「テラスハウス」の木村花さんのお母様をネットで誹謗中傷したとして、加害者男性が「名誉毀損」で書類送検されたとのニュースがありました。(参考記事:産経新聞)
ネット上の心無い誹謗中傷で亡くなった花さん自身に対する加害者は、「侮辱罪」で科料9千円に問われただけです。(参考記事:BBC NEWS JAPAN)
意外と知られていない「名誉棄損」と「侮辱」の違い
名誉毀損と侮辱はどう違うのでしょうか。
いずれも人の尊厳を言葉で傷つけるものです。
例えるなら、名誉毀損は「Aさんは山手線で痴漢をした」と、具体的なある事実を示してするもので、侮辱は「Aさんはスケベだ」などと事実を示さないで評価的な言葉で傷つけるものです。
報道によると木村花さんの件も、加害者の男性は木村さんのツイッターのアカウントに「性格悪い」「いつ死ぬの?」などと書き込んだとされており、事実を記載したものではありません。
いずれも犯罪になるには、一対一の関係ではなく、不特定多数の人にわかるようにした行為である必要がありますので、SNSへの記載はその典型です。
名誉毀損罪の法定刑が「3年以下の懲役もしくは禁錮」または「50万円以下の罰金」であるのに対して、侮辱罪は「1年以下の懲役もしくは禁錮」または「30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」と格段に軽微な犯罪とされています。
ですから、木村さんのケースではご本人よりお母様の件のほうが重く扱われたことになります。
SNSで晒されるのは事実の指摘の有無をとわずダメージが大きなことですから、侮辱罪をより重くしたらどうかという議論も出てきています。
本当のことでも名誉棄損になるのか
なお、その内容が事実であっても名誉毀損は成立します(対象者が公人であって公共性、公益性がある場合を除く)。
不倫事件などで、「相手のことを社会的に貶めたい」などとして「不倫相手の職場に知らせたい」と主張する方がまれにいます。
しかし、相手が一般の方であれば、たとえ不倫が不法行為であっても、相手の職場に知らせることは名誉毀損になり得ますから、注意が必要です。
ひどいことを言われたら、相手に謝罪を強制することはできるのか
民事的にも名誉毀損、侮辱の行為はそれぞれ社会的名誉、名誉感情を傷付けるものとして不法行為ですが、損害賠償額になると裁判上は数万円から数十万円にしかなりません。
そのため、法律相談でも、「相手にひどいことを言われた」という方の中には、お金ではなく「相手に謝罪を強制させたい!」という方もいらっしゃいます。
しかしながら、今の民法では事実を公表しないで行う侮辱行為や、公然性がないために名誉棄損そのものにはあたらない場合に、相手に謝罪をさせる「判決」を得て謝罪を「強制」することはできません。
せめて「和解」で「任意」の謝罪を求めることができるにとどまります。
名誉毀損の場合にのみ、民法723条で、「名誉を回復するのに適当な処分」として謝罪広告などを求めることができるとされていますが、非常に要件が厳しく限られています。
刑事的にも民事的にも、法的な制裁は十分でないのが現状
SNSで誰でも誰に対してもなんでも発言できる現代社会では、名誉毀損、侮辱、共に問題を起こしやすい行為です。
しかしながら、このように、刑事的にも民事的にも法的な制裁は必ずしも十分ではありません。
木村さんの事件は、ネット社会で簡単に人が人を傷つけることができることを象徴した事件であり、その波紋は今も残り続けています。
言論の自由はもちろんですが、特定の誰かのことについて、特にSNS上に何かを記載することについては、慎重でありたいものです。
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