法律コラム

スタートアップ社長必見!事業を守るための【中小企業コンプライアンス完全ガイドvol.1】

スタートアップ社長必見!事業を守るための【中小企業コンプライアンス完全ガイドvol.1】

2024.10.02

こんにちは、弁護士の藤間崇史です。「コンプライアンス」という言葉を耳にしたことはありますか?
 
「言葉は知っているけれど、具体的にはわからない」「(大企業に対する後ろ向きなイメージで」中小企業やスタートアップにはあまり関係ない」と考えている方も多いかもしれません。
 
しかし、スタートアップ企業の経営者にとって、コンプライアンスは単なる「法令遵守」ではなく、会社を成長させ、リスクを最小限に抑えるための重要な『経営戦略』なのです。
 
創業初期のスタートアップが陥りやすいリスク管理の落とし穴や、コンプライアンスを適切に行うことの重要性を知ることで、ビジネスは飛躍的に成長する可能性を秘めています。
 
今まさに創業を考えている経営者の方にとって、コンプライアンスの視点を取り入れることは、事業を成功へ導くための必須要素と言えます。
 
そこで本記事はスタートアップ経営者が理解しておくべき具体的なご相談内容から、それに関連する法律的なポイントを解説していきます。

スタートアップの経営を守る『コンプライアンス・チェックシート』とは

会社立ち上げ当初は運営に集中し、日々の業務に追われてしまうことが多いでしょう。
 
しかし、『法的なリスク管理』を怠ると、後に大きな問題に発展することもあります。よって、コンプライアンスに関連する問題は、どの企業も避けては通れません。
 
「創業時にどのような法的リスクが存在するのか?」
「今、自分の会社がどの程度コンプライアンスに対応できているのか?」
 
これらをチェックするために、まずは日弁連が作成した『コンプライアンス・チェックシート』 を活用しましょう。
 
まずは会社が直面する可能性のあるリスクをあぶり出し、どのような法律問題が隠れているのかを理解することが重要です。

ケーススタディ①株主総会を開かないリスク

◾️相談ケース:
私はスタートアップの代表取締役で、株式の70%を所有しています。残りの30%は親族が持っていますが、経営に関心がないため、株主総会には出席しません。だから実際には総会を開かず、書類を作って形だけ済ませています。これで問題ないですか?
  
◾️法律上のポイント:
中小企業やスタートアップの経営者の中には、株主総会を形式的にしか行わないケースが多く見受けられます。
 
しかし、実際に株主総会を開催しないことが重大なリスクを引き起こす可能性があります。
 
会社法第295条によれば、株主総会は会社の全ての重要な事項を決定する場です。この総会を開催せずに決議が行われなかった場合、『総会決議不存在確認の訴え(会社法830条1項)』を起こされるリスクがあります。
 
この訴訟は、総会決議の有効性を確認するもので、誰でも提訴でき、将来的に会社運営に深刻な影響を与える可能性があります。
 
たとえ主要株主で結論が見えていたとしても、株主総会を正式に開催し、議事録を残すことは、スタートアップの法的リスクを減らし経営の安定に寄与します。

ケーススタディ②招集通知を送らない株主総会の問題点

◾️相談ケース:
株主総会は開催していますが、招集通知は出さずに電話で声をかけるだけです。特に、遠方に住む親族株主には連絡していません。
 
◾️法律上のポイント:
会社法第299条によると、株主総会の招集通知は少なくとも1週間前に株主全員に対して書面で通知する必要があります。
 
この通知を省略するには株主全員の同意が必要ですが、遠方の株主に連絡しない場合、同意を得たことにはなりません。
 
もし招集手続が適切に行われていない場合、株主総会決議取消しの訴え(会社法831条1項1号)を提起されるリスクがあります。
 
スタートアップの経営者として、法的に有効な総会を運営するためには、招集手続をしっかりと遵守し、必要に応じて委任状や議決権行使書面を活用することが重要です。

ケーススタディ③取締役会を開かない場合のリスク

◾️相談ケース:
私の会社では、取締役会はあるものの、取締役は家族や親族なので実際に取締役会を開いたことはありません。これは問題ないでしょうか?
 
法律上のポイント:
取締役会設置会社では、会社の業務執行についての重要な意思決定を行う場として、取締役会が必要です。
 
会社法362条に基づき、会社の「重要な財産の処分」や「多額の借財」など、必ず取締役会で決議しなければならない事項があります。
 
取締役会を開かずに、これらの決議を行わなかった場合、後々取締役間でのトラブルや訴訟に発展する可能性があります。
 
たとえ親族だけの取締役構成であっても、法定の手続きを適切に行い、取締役会を開催することは、会社の健全な運営に不可欠です。

ケーススタディ④議事録を作成しないリスク

◾️相談ケース:
株主総会や取締役会は開いていますが、議事録は作成していません。大丈夫でしょうか?

◾️法律上のポイント:
会社法第318条、および第371条によると、「株主総会や取締役会の議事録を作成し、会社に備え置かなければならない」とされています。
 
議事録がない場合、後々その決議が有効だったかどうかの証明ができず、紛争が拡大するリスクがあります。
 
議事録を作成せずに放置すると、最悪の場合、過料が科せられることもあります(会社法976条8号)。
 
株主や取締役が家族であっても、法的に有効な会社運営を行うためには議事録を適切に作成し、保存することが必要です。

成功するスタートアップの秘訣は『事前のリスク管理』にあり!

 スタートアップや中小企業の経営者にとって、コンプライアンスを軽視することは非常にリスキーです。
 
法的なリスクを事前に回避するためにも、株主総会や取締役会の適切な運営、招集通知の送付、議事録の作成など、基礎的なコンプライアンス事項をしっかりと実践しましょう。
 
この連載では、スタートアップの経営者が直面する可能性の高い法的リスクを解説し、それを回避するための具体的なアドバイスを提供してまいります。
 
次回の記事では、さらに踏み込んだコンプライアンスの実務について解説しますのでお楽しみに。

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