法律コラム

スタートアップ業界注目のデジタルヘルス「SaMD」の現状と課題について【身近なところの ニュース法律解説】

スタートアップ業界注目のデジタルヘルス「SaMD」の現状と課題について【身近なところの ニュース法律解説】

2024.04.02

弁護士の藤間です。
世の中で注目されている時事問題のうち、企業様の関心が高いトピックについて、法律に関わる部分を解説したいと思います。
 
今回は、近年スタートアップ業界を中心に注目されている「SaMD(Software as a Medical Device)」です。
 
近年、疾患を治療したり、服薬を管理したり、健康を維持したりするためのデジタル技術(アプリなど)が続々と開発されていますが、そうしたデジタル技術はデジタルヘルスと総称されています。
 
中でも流通・販売に当たって薬事承認が必要となるものは「プログラム医療機器(Software as a Medical Device:SaMD、サムディー)」と呼ばれ、そのうち、治療用アプリなど疾患の治療を目的としたものは「デジタル治療(Digital Therapeutics:DTx)」、健康増進などを目的に利用されるデジタル技術は「Non-Software as a Medical Device:Non-SaMD、ノンサムディー」と呼ばれています。
 
最近、SaMDに関して、①医療機器への該当性②アプリの開発における資金調達の難易度③個人情報の取扱いについてご相談を受けることが多いので、法的観点から、一度整理をしたいと思います。

SaMDを取り巻く問題

プログラム医療機器は、医療現場において、これまでマーキングが難しい領域でしたが、診察から次の診察までの間の患者のスコアを記録できるようになりました。
 
データの利活用の期待が大きい一方で、薬事制度の整備が未整備部分が多く、かつ、実際のアプリを開発する場合にはその費用が高額になりやすいなどハードルが高い分野です。
 
2024年3月現在、厚労省は、「プログラムの医療機器該当性に関するガイドラインについて」(令和3年3月31日付/薬生機審発0331第1号・薬生監麻発0331第15号)やプログラム医療機器事例データベースを公表しています。
 
これから、SaMD業界に参入する事業者にとっては、自社のビジネスが医療機器プログラムに該当するかが、一番の関心ごととなるかと思いますので、まずは医療機器プログラムについて解説いたします。

プログラムの医療機器該当性

医療機器プログラムに該当する医療機器は
① 人、若しくは、動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること。
又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く)であって、政令で定めるもの(医薬品医療機器等法第2条第4項)
 
② 疾病診断用プログラム、疾病治療用プログラム及び疾病予防用プログラム(プログラムを記録した記録媒体も同様)(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行令(昭和36年政令第11号))
 
③ 「副作用又は機能の障害が生じた場合においても、人の生命及び健康に影響を与えるおそれがほとんどないものを除く」についても、各プログラムの定義において定められていることにも注意する必要あり
 
④ 機能等が一般医療機器(クラスⅠ医療機器)に相当するものについては、医療機器の範囲から除かれる点についても、注意する必要あり。事業者においては、自社のビジネスが、上記の区分に応じて規制の対象となる医療機器に該当するかを判別する必要あり。
  
SaMDを取り巻く問題プログラムの医療機器該当性、アプリの開発段階における資金調達の問題、個人情報の取扱いに関する項目を詳細に解説しました。
 
これらの問題は、新たな医療機器やアプリを開発する企業や開発者にとって重要な課題です。
 
最新の法令や規制に則りながら、技術の発展を促進し、医療の質を向上させることが求められます。
 
それぞれの項目について、さらなる詳細や具体例を挙げながら、SaMDの展望と課題について掘り下げていきます。

SaMDを取り巻くさまざまな課題

プログラム医療機器は、患者のデータを記録・分析することで治療の効果や病状の変化を把握するために活用されます。
  
しかし、薬事制度の整備が未整備部分が多く、アプリを開発する場合には高額な費用がかかるという問題があります。
 
また、厚生労働省が公表しているプログラムの医療機器該当性に関するガイドラインやデータベースを参照しながら、事業者は自社のビジネスが医療機器プログラムに該当するかを判断する必要があります。
 

アプリの開発段階における資金調達の課題

アプリの開発やローンチには多額の資金が必要です。
 
定期的に日本医療研究開発機構における開発費の助成事業の公募が行われていますが、助成事業の公募のタイミングが合わない場合や、助成金だけでは賄えない場合もあります。
  
このような場合には、エクイティファイナンス(金融機関からの借入ではなく、主に株式発行によってエクイティ=株主資本を増やし、資金調達すること)を活用することが一般的です。
 
また、優先株の発行や個人投資家への株式譲渡など、さまざまな方法で資金を調達することが可能です。
 
特に、プログラムが保険医療の対象となる場合には、収支予測が立てやすく、安定的なビジネス展開が見込めます。

個人情報の課題

医療分野でのデータ利用には、患者のプライバシー保護が必須ですが、特にSaMDでは、個人情報の安全な管理と利用が求められます。
  
アプリを開発するにあたっては、サイバーセキュリティが必須の項目(基本要件基準第12条第3項)となっており、サイバーセキュリティに係る規格が指定されるようになりました。
  
新規参入にあたっては、このサイバーセキュリティについても留意しなければならないことについて、確認する必要があります。

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