法律コラム
「食べログ」敗訴から勝訴へ。デジタルプラットフォームに対する考え方【身近なところの ニュース法律解説】
パートナー弁護士の藤間です。企業顧問や事業継承を専門としております。
そこで、身近なニュースから法律について、紐解いてみましょう。
独占禁止法違反を提訴の主な理由として焼き肉チェーン店「KollaBo」を展開する株式会社韓流村が、「食べログ」の株式会社カカクコムを提訴した事件がありました。
食べログが点数調整(採点アルゴリズムの変更)を行い、“チェーン店”の点数を一律で引き下げたとして、チェーン店側が食べログ側に損害賠償などを求めたものです。
2021年6月16日、1審の東京地裁が、食べログが一方的に点数調整を行ったことは、独占禁止法が禁じる優越的地位の濫用に当たると認定し、食べログ側に対して賠償金3,840万円の支払いを命じました。
2023年1月に出た控訴審の判決は、改めてこれを否定し、優越的地位の濫用の蓋然性と賠償金の支払いを否定しました。
独占禁止法とは
「独占禁止法」と聞くと、文字通り企業同士の「独占」を禁止する法律なのだな、と思うでしょう。
当然、カルテル(価格協定)、トラスト(企業結合)による企業間の独占が規制されているわけですが、この法律は、正式名称を「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」といい、「公正でない取引」つまり「不公正な取引」についても規制するものです。
本来、この法律は、違反行為を発見した「公正取引委員会」(=国、行政側)が、「企業」に対して「排除措置命令」や「課徴金納付命令」といった行政上の処分を出すものですから、焼き肉チェーン対カカクコムの争いに直接適用されるわけではありません。
とはいえ、独占禁止法は、「公正で自由な競争」をして「経済の健全な発達をはかりましょう」というコンセプトをもつ、自由競争経済における経済の基本法ともいわれる法律です。
今回の判決では、株式会社韓流村が、独占禁止法違反にあたる「不公正取引」であることを民事上の不法行為の理由として、食べログに対して損害賠償請求をしたところから話題となりました。
食べログ事案の高裁判決は…食べログが逆転勝訴、独禁法違反認めず
事案では、カカクコム側のアルゴリズムの変更、これに伴う店舗の評価の下落が、
「不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと」=差別的取り扱い(2条9項6号イ)、
「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に」「取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること」=優越的地位の濫用にあたるのではないか(2条9項5号ハ)
これらにあたるのではないかが問題とされ、実際に、裁判所から公正取引委員会に「求意見」がなされ、これに対する回答が委員会からされました。
いずれも、食べログでのアルゴリズム変更は、理論的にはそのいずれにも該当しうる、という回答がされてています。
1審の東京地裁は、前者(差別的取り扱い)にはふれず、後者(優越的地位の濫用)について、食べログ側が「優越的地位」にあることを前提として、個別に告知のないアルゴリズムの変更が「あらかじめ計算できない不利益を与える」として、6億を超える請求額のうち、3,840万円を認定したものでした。(新・判例解説はこちら)
今回の高裁判決は、高裁も問題のアルゴリズム変更が「優越的地位にある食べログ側による、原告に不利益となるような取引の実施だった」と認めつつ、「変更はチェーン店の評点調整以外にも多岐にわたる大幅なものであり「消費者の感覚とずれた評点の是正」などの狙いがあったから、「合理的な目的で相当な範囲だった」「評点下落だけでは原告の市場での競争に大きな影響を与えるとは認められない」とも述べ、不当とは言えないと結論づけたといいます。(朝日新聞の記事はこちら)
デジタルプラットフォームに対する、公正取引委員会の動き
食べログをはじめとする、オンラインサービスの「場」を提供して利用者と企業をつなぐシステムを「デジタルプラットフォーム」といいます。
デジタルプラットフォームについては、その評価の適切性がそれを利用とする店舗側から繰り返し呈され、2020年ころから、公正取引委員会の側も、問題意識を示してきていました。(公正取引委員会の考え方はこちら)
特に一般消費者向けの店舗が、なんらかのプラットフォームを利用して一般に遡及している状況はここのところ顕著です。
飲食系には食べログのほかにも多数のサイトがありますし、ホテルも同様で、美容系には「ホットペッパー」などがありますし、我々弁護士にも 「弁護士ドットコム」などがあります。また、Google上の事業者評価も同様でしょう。
今回は、プラットフォーム会社の側の裁量が広く認められたものになりましたが、今後公正取引委員会が個別に違反の認定することがありうるのか、今後の動向が注目されます。
EUではデジタルサービスに対する法律の適用が開始
また、2024年2月17日以降には、欧州連合(EU)において、デジタルサービス(法律原文では「inetermediary services」)プラットフォームサービスを提供する場合には、
①個人のデータの保護
②AI規制
③データ共有規制
④データセキュリティ義務の設定
⑤違法コンテンツの規制に関する各規定を含む、プラットフォーマーの役割及び責任
を定めてデジタルサービス法(Digital Services Act)の適用が開始されます。(総務省による解説はこちら)
近い将来、日本においても上記の①~⑤に関しては規制がされる可能性が高く、当事務所としても、同法を参考に規制の方向性について研究をしております。
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