法律コラム

LINEとYahoo! の経営統合 はどのように行われた?【身近なところのM&Aニュース解説】

LINEとYahoo! の経営統合 はどのように行われた?【身近なところのM&Aニュース解説】

2023.11.09

パートナー弁護士の藤間です。企業顧問や事業継承を専門としております。

M&Aとは、Merger(合併)&Acquisition(吸収)の略です。

M&Aといえば聞こえはいいけれど、実際どんなことがどのように行われているのかわかりづらい… 。

そこで、身近なニュースからM&Aについて、紐解いてみましょう。

最近の身近なM&Aと言えば…LINEとYahoo! の経営統合

もっとも身近なもののひとつが、2023年10月1日のLINEとYahoo! の経営統合

LINEの画面にプライバシーポリシーの統合への同意画面が出て「同意しないと使えなくなる」戸惑っている人も少なくないと思います。  

どうやら、統合後のLINEヤフーの「プライバシーポリシー」(個人情報の利用についての方針)そのものには同意しないと、LINEの使用が続けられなくなってしまうようです。 

しかし、これに続けて表示されるLINEアカウントとYahoo! IDの連携」については、同意しなくてもLINEの使用の継続は可能だといいます。  

では、LINEとYahoo! の経営統合は、どのように行われたのでしょうか。

1.実は、2019年からZホールディングスの「100%子会社」 だった

実は、Yahoo! を運営する「ヤフー株式会社」、LINEを運営する「LINE株式会社」とも、それぞれ、2019年から「Zホールディングス株式会社」の100%子会社(いずれの会社もZHDが100%の株式を保有している会社)となっていました。

2.まずヤフーを2023年7月に「吸収合併」

「Zホールディングス株式会社」は、まず、「ヤフー株式会社」を消滅会社として2023年7月に「吸収合併」を行います。
 
「吸収合併」とは、一定の対価を交付することを条件に、消滅会社の権利義務を引き継いで、消滅させる合併方法をいいます。
 
通常は消滅する会社に存続する会社(吸収する会社)の株式等を対価として交付されるものとされますが、今回はすでに、消滅するヤフー株式会社が吸収するZホールディングス株式会社の100%子会社であったので、Zホールディングス株式会社の株式、金銭などは対価としては支払われなかったとされています。 (関連書類「吸収合併に係る事前開示書類」

3.その後、LINEを「吸収分割」

次に、「Zホールディングス株式会社」は、LINE株式会社を分割会社、自らが承継会社となって、「吸収分割」を行いました。
 
LINE株式会社の側は個別に資産、債務、契約その他の権利義務を承継会社であるZホールディングス株式会社に引き継がせます。
 
すでにLINE株式会社がZホールディングスの100%子会社であるので、吸収分割にあたり、Zホールディングスの株式をLINE株式会社に交付することはしなかったものとされています。(関連書類「吸収分割に係る事後開示書類」)

4.最後に「LINEヤフー株式会社」へと「商号変更 」

最後に、まずヤフーを吸収合併で、そしてLINEを吸収分割で吸収した「Zホールディングス株式会社」は、これらの効力が生じるのと同時に、2023年10月1日付で「LINEヤフー株式会社」に商号を変更し、手続きが完了した、というわけです。

「吸収分割」と「吸収合併」の違いとは

ところで、なぜLINEはヤフー同様の「吸収合併」でなく、「吸収分割」であったのでしょうか。
 
「吸収分割」は、吸収される会社のすべてが存続会社に吸収されて会社が消滅する「吸収合併」とは異なり、分割する会社(今回はLINE株式会社)の事業の全部ではなく一部を引き継がせるもの。
 
ですので、LINE株式会社は残された事業で存続することになり、「ヤフー株式会社」とは異なり「LINE株式会社」自体は残って、ファイナンシャル部門などを引き継いでいるようです。
 
ひとことでLINEとヤフーの経営統合、といっても、これまで、同一の持株会社がそれぞれヤフーとLINEをそれぞれ100%子会社にしていた状態であったものが、今回のM&Aによって、両社が正式に同一の法人(会社)になったものであるということがお分かりになったかと思います。

詳しくは各関連書類でご確認を

以上は、一連の企業再編の経緯の仔細を省き、ごくごくダイジェストでまとめたものにすぎませんので、細かな経緯を知りたい方は、LINEヤフー社のIR(投資家向け広告)ウェブサイトを見てみるとよいかもしれません。
 
一見、難解に思われるM&Aのお話も、身近な会社のニュースから紐解いてみると、少し身近にわかりやすく感じられると思います。
 
「吸収合併」や「吸収分割」という難しい法律用語が多いですが、どの手段を用いることが最適かを検討して、提示することが法律家に求められる役割なのかもしれません。

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