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【コロナと法律】結婚式場キャンセルのご相談が増えています

【コロナと法律】結婚式場キャンセルのご相談が増えています

2021.01.25

先日来、結婚式場キャンセルによるキャンセル料のご相談が急増しています。
 
結婚式などの開催による人の集まりは、緊急事態宣言下においても、完全に禁止とまではされておらず、結婚式での集まりでのクラスターの発生も繰り返し報道されていることから、参列者へ配慮して、実際に予定していた結婚式をキャンセルする方々が増えたことによるものと思われます。
 
一方で、結婚式場側の辛い事情もあるでしょう。今回、東京都では、飲食店には一日最大6万円の時短協力金が給付されることになりましたが、結婚式場などはその対象とはならず、今回の再度の感染拡大に大きな影響を受けています。
 
そんな中、弊所の結婚式場のキャンセルをめぐるコラムが幻冬舎ゴールドオンラインに掲載され、見ていただいた方もいらっしゃったかもしれません。
 
 
ご相談が急増する中、この話題について少し掘り下げてみたいと思います。

コロナは「不可抗力」なのか?

火事や地震、津波で「式場がなくなってしまった」という場合=つまり天災などの「不可抗力」により式の開催自体が「不可能」になってしまった場合であれば、客都合によるキャンセルではなく、式場側からのサービスの提供自体が不可能(=「履行不能」)ですから、客側も対価を支払う義務が消えてしまいます(民法536条1項,542条1項)。
 
では、新型コロナウイルスという感染症は、このような場合にあたるのか…。
昨年来発生した事象ですので、明示的に取り扱った裁判例はまだ見当たりません。このような状態では、社会通念上は「参列者の健康に配慮するのは当然で開催が不可能」と考えられるように思われます。
式場によっては約款・契約内容にかかわわず、時勢に鑑み、「請求なし」ということで落ち着けているところもあると聞きます。
 
一方、冒頭のような「天災によって会場が滅失してしまった!」というような場合と比べると、同列とみるのは躊躇されます。
実際に、飲食なしやリモート併用で結婚式を開催されている方もいますので、「絶対に不可抗力に分類される」とはいいがたいのが実情です。
 
そのために、キャンセル=客都合による解約となり、式場側は約款(契約)内容に従い、キャンセル料を請求している場合も多いようです。

キャンセル料は払う義務はある?

約款・契約上のキャンセル料の規定のとおりに、全額を支払う義務はあるのでしょうか。
 
前回、消費者契約法9条1号に従い「平均的な損害」を超える部分の支払義務は無効になる(払わなくてもよくなる)ことをお伝えしました。
 
「平均的な損害」とは何かについて。単に式場側で費用負担済みの実費部分だとすれば、キャンセル料の大半が戻ることになりますが、実際はキャンセル料の中に「キャンセルされなければ他のお客様と契約して得られたはずの利益(=「逸失利益」)が含まれています。
 
開催日からはるか前ならば他の方に利用させて利益をあげることができる一方、開催日に近づけば他の申込が得られる可能性は近くなります。そのため、開催日に対してキャンセルが近づけば近づくほどキャンセル料は高くなります。
 
では、新型コロナウイルスで直前キャンセルを迫られた場合、高額なキャンセル料の支払い義務があるのでしょうか。
コロナの関係から、キャンセルしても今新たに別の顧客が利用する可能性は高くないように思われます。
でも、そのことによって「平均的損害」の額は下がるのでしょうか。
 
新型コロナウイルスについて、この点について明示的に示した裁判例はやはり未だないことから、新型コロナウイルス発生前に、過去に式場のキャンセルをめぐって争われた事例を見てみましょう。

式場キャンセルを巡って、過去の裁判例から

1.京都地裁平成26年8月7日判決(判時2242号107頁)
この裁判例では、平均的損害は次の式により計算するものされました。式場がキャンセルにより失った「逸失利益」-式場がキャンセルにより免れたコスト「損益相殺すべき利益」
=平均的見積・請求額 × 粗利率% × (1-再販率)
 
これによると、再契約に至る確率が1に近ければ近いほどホテル側に損害は出ないわけですから「平均的損害」の額は小さくなりますし、再契約に至る確率が低ければ低いほど、ホテル側に損害が出やすくなるのですから「平均的損害」の額は大きいことになります。
 
2.東京地裁平成平成14年3月25日判決(判タ1117号289頁)
この裁判例では,開催日から2か月前の解約の場合において、①開催予定日に他の客からの予約が入る可能性が高いこと
②本件予約の解約により会場は本件パーティーにかかる材料費、人件費等の支出をしなくて済んだこと
一方で
③本件予約の解約がなければ営業利益を獲得することができたこと
④パーティーの開催日は仏滅であり結婚式二次会などが行われにくい日であること
⑤予約の解約は自己都合であること
などを総合考慮して、一人当たりの料金4500円の3割に予定人数の平均である35名を乗じた(4500×0.3×35=4万7250円)と認めました。
 
やはり、同様に、今後ほかの客からの予約が入る可能性がどれだけあるか、という点に注目しています。
 
3.東京地裁平成17年9月9日判決(判時1948号96頁)
この判決は、挙式予定日の約1年前に申し込んで申込金10万円が支払われ、その6日後にキャンセルとなった事案です。
①この式場では挙式予定日の1年以上前から挙式等を予定する者は予約全体の2割にも満たない
②式場においても、予約日から1年以上先の日に挙式等が行われることによって利益が見込まれることは、確率としては相当少ない
③仮にこの時点で予約が解除されたとしても、その後1年以上の間に新たな予約が入ることも十分期待し得る時期にある
 
などとして「得られたはずの利益」は「ない」として、10万円全額の返還が式場側に命じられています。

逸失利益(次の予約がどれだけ入るか)という問題

以上のとおり見てくると、これまでの裁判例の傾向ではキャンセルによって式場側が失う利益(損害)は、相当前のキャンセルなら「ほかのお客さんが十分に入るから式場には損害がない」という一方で、直前のキャンセルとなると「他のお客さんが入る余地がなくなり損害が大きくなりやすい」として、粗利率や再契約率に鑑みて、一定額逸失利益を認める傾向にありました。
 
今回の新型コロナウイルスの蔓延状況では、もともと他のお客さんが新たに得られる可能性は平時よりも低くなってしまっている状態なので、これまでの裁判例の理屈がそのまま妥当しません。
 
このような場合、逸失利益を認めるかどうか…。この点について正面から向き合った議論は、未だ尽くされていません。

ぜひ、お気軽にご相談ください

ご相談に見える方も「式場側も大変なんだとは思いますが、でも…」と言葉を濁される方も多いです。
約款・契約があっても式場側と任意の合意による解決はOK。話し合っても合意ができそうにないときは、ぜひ一度ご相談ください。
 
弊所では、引き続き衛生面に配慮した来所面談とともに、オンラインでZOOMによる面談のオプションをご案内していますので、ぜひお気軽にお問合せください。
 
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