法律コラム

法律には書かれない”実際”のところ「コロナ離婚」にならないために【男と女の相談室】

法律には書かれない”実際”のところ「コロナ離婚」にならないために【男と女の相談室】

2020.04.09

第6回●コロナショックで夫婦が崩壊寸前です…どうしらた良いでしょうか?

法で解決できること=人生においてハッピーエンドか、必ずしもそう言い切れないのが世の常です。
非常事態宣言が出された前後から、ツイッターをはじめとするSNSやインターネット上で「コロナ離婚」というワードが急浮上しました。ここでは弁護士水谷が法律専門家としての見解だけに関わらず、お話しさせていただきます。多くの人生に寄り添ってきた彼女だからこそ言える、芯の部分が垣間見えると思います。

■相談内容
コロナショックで家族全員が四六時中一緒で、もう息がつまっています。特に、夫との価値観の相違がいつも以上に見え隠れして、関係がこれまで以上に悪化しています。このままだと、コロナ離婚も考えざるを得ない状態です。

■水谷の考え
不要不急の外出が自粛され、子どもは普段、学校や幼稚園(保育園)は休校、仕事は自宅でリモートワーク。家族みんなが家にいる時間が増えることで、「家族回帰してよかった」というご家庭もあるでしょうが、どんなに広いおうちでも、子どもが家にいるだけで落ち着かず、片付かず。その上、配偶者までいるのでは「…もう耐えられない!」という気持ちがあって当然です。

今回のコロナショックのことを、東日本大震災と同列視されることが多いですが、実際、東日本大震災の時にも、離婚率は「一定程度上昇した」という話があります。コロナ離婚=家にいるからお互い不満が募りやすい、という単純な理由ではないのです。

離婚弁護士目線で見る「コロナ離婚」の真の理由

コロナ離婚も震災離婚も、共通している真の理由は2つ考えられます。

まずは「経済的事情」。
経済的な圧迫は、即、心理的な圧迫へとつながります。このような時、一方の事業が大きな損害を受け立ち回りが効かなくなっている、もしくは、夫婦の他方に浪費や借金があって余計な家計を圧迫しているとか…など、ネガティブな事情が少しでもあると、夫婦関係解消ムードが高まり易くなります。

そして「非常時の危機管理能力」。
危機的な状況に陥ると、これまで見えてこなかった(あるいは見ないようにしていた)配偶者の側面が見えてしまう、もしくは、肝心な場面での危機管理能力に疑問を抱き、信頼ができなくなる…というのが、もう一つの理由と言えます。

弊所でも、お子さんの急病時に、一方の配偶者の危機感があまりにも足りず幻滅した。あるいは、自分は日々対応に追われているのに、相手は「我関せず」で飲みに出かけていた(はたまた異性関係を繰り広げていた…)というご相談は日常茶飯事。このことから、危機管理に対する価値観の相違は、非常事態には大きな影響を与えるのです。

コロナショックが理由で、離婚できる?

どんな離婚にも理由はあります。
特に、上記のような①経済的な事情②非常時の危機管理能力といった問題は、信頼関係を決定的に破壊し、夫婦が離婚する理由になりやすいのです。

ただし、私のコラムでも繰り返しお伝えしていますが、「これって離婚事由になりますか?」という質問が「相手が徹底的に離婚を拒絶した場合、これ(モラハラ・性格の不一致など)が裁判で勝訴できる離婚事由にあたるか」という意味であれば、必ずしもそうではありません。(この点は、民法770条1項5号「婚姻を継続しがたい重大な事由」を家庭裁判所がどう解釈しているか、という話になりますので、詳しくは別の機会に。)

この状態がずっと何年も続くわけではありませんし、日常生活に戻れば、またもとの夫婦に戻れるだろうけど、「今はつらい!」というようなご家庭。申し上げるまでもないですが、やはり今は、離婚を考えるべきときではありません。

結婚式で、「健やかなるときも、病めるときも」というのがまさに今。コロナはまさに(家庭や経済が)「病めるとき」なのだから。言い古されたこのフレーズは、離婚弁護士から見ると、言い得て妙。
良い時も悪い時も、「互いに支えあう」とはいかなくても、何とか「乗り切る」のが結婚生活。非常事態ですもの、普段通りの家事、普段通りの仕事、普段通りの趣味が家でできなくなったのも仕方ない、と割り切って、神父さんの「汝は健やかなるときも、病めるときもこの者を愛し…」を、日々、自分に問いかけてほしいと思います。(いつまで待てばいいのか、途方にくれますけれど)

DVの場合は、すぐに専門機関に相談を

一方で、やり過ごしてはいけない状況もあります。それは「DV」。
外出禁止が先行した欧米では、女性に対するドメスティックバイオレンス(DV)が急増しているといいます。国連によると、フランスでは、1週間でDV件数が3割以上増えるなど、世界各地でDVの増加が報告されているとのこと。4月5日には、国連の事務総長が、外出禁止が続く各地で女性への家庭内暴力が増えていることについて、強い危機感を示しています。日本もまたこの傾向は例外ではないはず。

DVは、互いに「この人はなんでも受け止めてくれる」「暴力は受けているが私にはこの人がいないとだめ」といったお互いに依存的な関係がある場合に特に顕著に現れます。外出制限の問題はありますが、心身に変調をきたす前に、電話で相談できる自治体や女性センターなど(もちろん、私たち弁護士でもかまいません)、助けを求めてほしいと思います。

一日も早い事態の収束を願うばかりですが、夫婦のこと、家族のこと、見直す機会でもあります。心身の健全を保つためにも、我慢しすぎず、気分転換をはかったり、外部に相談したり…、どうか、この状況を乗り切っていきましょう…!

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