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第六回●遺留分減殺請求権の金銭債権化

2019年より民法に含まれる相続に関する規定(相続法)の改正が順次施行されます。
前回の大幅な改正は1980年のことで、相続に関する規定は40年ほど見直されておらず。その間に、高齢化や家族形態の変化、社会の考え方の変化も生じているということで、相続法大改正が施行されることに。どんな改正が行われるのでしょうか、シリーズで解説します。今回は「遺留分減殺請求権の金銭債権化」について。

【内容】
①遺留分減殺請求権から生ずる権利を金銭債権化する
②金銭を直ちには準備できない受遺者又は受贈者の利益を図るため、受遺者等の請求により、裁判所が、金銭債務の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができるようにする。

【趣旨】
これまで、遺留分(いりゅうぶん)減殺(げんさい)請求権の法的性質は、形成権(物権的効果)であるとされていました。すなわち、最高裁昭和41年7月14日判決により、遺留分減殺請求権を行使する旨の意思表示がされると、遺留分を侵害する範囲で目的物上の権利は、当然に遺留分権利者に復帰するというのです。これにより、遺留分減殺請求権の行使によって不動産などに共有状態が生じてしまいます。
これに対して、民法1041条により、「受贈者及び受遺者は、減殺を受けるべき限度において、贈与又は遺贈の目的の価額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を免れることができる。」と規定され、現実に価格を弁償してはじめて物権的な効果を封じられるとされていました。
特に不動産は時価で評価するので、通常はかなり弁償額が大きくなってしまい、遺言による事業承継の妨げになるといわれていました。

改正はこれを改善するため、物権的な効果を否定し、弁償について一定の猶予を受けられるようにしました。


【施行時期】
2019年7月から適用されます。
改正法は、施行後に開始された相続に対してのみ効力をもちます。

【条文】
(改正後)
民法1028条以下のほとんどの規定は削除され次のとおり整備されます。


(遺留分侵害額の請求)
第1046条
1遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
2遺留分侵害額は、第千四十二条の規定による遺留分から第一号及び第二号に掲げる額を控除し、これに第三号に掲げる額を加算して算定する。
一遺留分権利者が受けた遺贈又は第九百三条第一項に規定する贈与の価額
二第九百条から第九百二条まで、第九百三条及び第九百四条の規定により算定した相続分に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額
三被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、第八百九十九条の規定により遺留分権利者が承継する債務(次条第三項において「遺留分権利者承継債務」という。)の額(受遺者又は受贈者の負担額)

第1047条
受遺者又は受贈者は、次の各号の定めるところに従い、遺贈(特定財産承継遺言による財産の承継又は相続分の指定による遺産の取得を含む。以下この章において同じ。)又は贈与(遺留分を算定するための財産の価額に算入されるものに限る。以下この章において同じ。)の目的の価額(受遺者又は受贈者が相続人である場合にあっては、当該価額から第千四十二条の規定による遺留分として当該相続人が受けるべき額を控除した額)を限度として、遺留分侵害額を負担する。
一受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が先に負担する。
二受遺者が複数あるとき、又は受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたものであるときは、受遺者又は受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。三受贈者が複数あるとき(前号に規定する場合を除く。)は、後の贈与に係る受贈者から順次前の贈与に係る受贈者が負担する。
2第九百四条、第千四十三条第二項及び第千四十五条の規定は、前項に規定する遺贈又は贈与の目的の価額について準用する。
3前条第一項の請求を受けた受遺者又は受贈者は、遺留分権利者承継債務について弁済その他の債務を消滅させる行為をしたときは、消滅した債務の額の限度において、遺留分権利者に対する意思表示によって第一項の規定により負担する債務を消滅させることができる。この場合において、当該行為によって遺留分権利者に対して取得した求償権は、消滅した当該債務の額の限度において消滅する。
4受遺者又は受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰する。
5裁判所は、受遺者又は受贈者の請求により、第一項の規定により負担する債務の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができる。


(改正前)
(遺留分の帰属及びその割合)
第千二十八条兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
一直系尊属のみが相続人である場合被相続人の財産の三分の一
二前号に掲げる場合以外の場合被相続人の財産の二分の一
(遺留分の算定)
第千二十九条遺留分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して、これを算定する。
2条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める。
第千三十条贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
(遺贈又は贈与の減殺請求)
第千三十一条遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる。
(条件付権利等の贈与又は遺贈の一部の減殺)
第千三十二条条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利を贈与又は遺贈の目的とした場合において、その贈与又は遺贈の一部を減殺すべきときは、遺留分権利者は、第千二十九条第二項の規定により定めた価格に従い、直ちにその残部の価額を受贈者又は受遺者に給付しなければ
第千三十四条遺贈は、その目的の価額の割合に応じて減殺する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
(贈与の減殺の順序)
第千三十五条贈与の減殺は、後の贈与から順次前の贈与に対してする。
(受贈者による果実の返還)
第千三十六条受贈者は、その返還すべき財産のほか、減殺の請求があった日以後の果実を返還しなければならない。
(受贈者の無資力による損失の負担)
第千三十七条減殺を受けるべき受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰する。
(負担付贈与の減殺請求)
第千三十八条負担付贈与は、その目的の価額から負担の価額を控除したものについて、その減殺を請求することができる。
(不相当な対価による有償行為)
第千三十九条不相当な対価をもってした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものに限り、これを贈与とみなす。この場合において、遺留分権利者がその減殺を請求するときは、その対価を償還しなければならない。
(受贈者が贈与の目的を譲渡した場合等)
第千四十条減殺を受けるべき受贈者が贈与の目的を他人に譲り渡したときは、遺留分権利者にその価額を弁償しなければならない。ただし、譲受人が譲渡の時において遺留分権利者に損害を加えることを知っていたときは、遺留分権利者は、これに対しても減殺を請求することができる。
2前項の規定は、受贈者が贈与の目的につき権利を設定した場合について準用する。
(遺留分権利者に対する価額による弁償)
第千四十一条受贈者及び受遺者は、減殺を受けるべき限度において、贈与又は遺贈の目的の価額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を免れることができる。
2前項の規定は、前条第一項ただし書の場合について準用する。
(減殺請求権の期間の制限)
第千四十二条減殺の請求権は、遺留分権
利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。
(遺留分の放棄)
第千四十三条相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
2共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。
(代襲相続及び相続分の規定の準用)
第千四十四条第八百八十七条第二項及び第三項、第九百条、第九百一条、第九百三条並びに第九百四条の規定は、遺留分について準用する。


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