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お待たせいたしました!法律ショートストーリーの新シリーズをお届けいたします。
当事務所で取り扱いのあった事例をもとにフィクションで再構成した完全オリジナル作品で
「より人生に近いところで仕事がしたい」水谷弁護士の思いを形にすべく1年前にはじめて今作で10話目。
今回はどんなストーリーなのでしょうか?

解決だけでは終わらないドラマがある
法律ショートストーリー
第10話 当事者は誰だ?①



Photo by Hans Eiskonen on Unsplash

先月、仕事から帰ってきたら家の中が空っぽだった。
仕事が忙しすぎて妻にかまってやれなかったことを理由に、出て行ったのだ。
しかも同僚の男のところに。

誰がどうみても、人生史上最大のピンチだ。
だが不思議とその感覚が俺の中にはないのだ。

理由はわかっている。
外野ばかりがうるさくて、自分ごととして頭に入ってこない。
なんかこの状況、以前にもあったな…。そうだ、5年前の結婚式だ。

典子は一人娘だ。
30過ぎのいい大人にもかかわらず、結婚式の打ち合わせにはきまって、両親がぴったりとくっついてきていた。
その都度、あの料理は美味しくない、あの引き出物はセンスを疑う、
このドレスは、この装花は…と全てにおいて、本人たちよりも先に親が口出しをしてくるのだ。
あの頃も自分の結婚式とは思えず、毎週末の打ち合わせに辟易としていた。
また、“嫁家庭が采配を振るっている”と言う状況も、うちの両親的には面白くないのだろう。
何かと文句をつけてきたが、もめるだけだ。自分の中に留めておいた。
新居選びも家具選びも…ほぼ両親が付き添って来たのは言うまでもない。
結婚生活が始まっても何かにつけて、典子の両親が来ていたが、それはもう諦めていた。
仕事も忙しくしていたので、その時親が来ていることにも少し甘えていた。

しかし、今回は訳が違う。
勝手に荷物をまとめて男の所に逃げ込んだ、自分の娘を差し置いて、
「典子に散々さみしい思いをさせ、あの子にこんな決断をさせた雅之さん。あなたが悪い!」
先に両親が先制攻撃してきたのだった。もう呆れて口が塞がらない。

何よりも突然すぎて頭の中で理解ができなかった。
いつからそんな思いを抱いていたんだ?典子からサインは出ていたのか?
どうして何も言ってくれなかったんだ…?
彼女の気持ちが全くわからないまま、典子の家のお抱えの弁護士から離婚調停の通達が届いた。

タイミング悪く、この日は母の誕生日だった。
毎年、弟夫婦も集まって、母の大好きなレストランでお祝いするのが通例だった。
最悪のメンタルだったが、行かざるを得ない。
この際、全員に伝えられる良い機会だと思って、現状を伝えておこう。
典子が来ない理由を告げた途端、両親は激昂した。

「なんなのよ!どういうこと?あの嫁は本当に何を考えているのよ!
雅之が身を粉にして働いている時に男のところに…!しかも調停ですって? あの親が甘やかせすぎているのよ。
最初からおかしいと思っていたけど、もう今回ばかりは黙っていられないわ。」

「雅之、心配するな。すぐにこちらも有能な離婚弁護士を立ててやる。慰謝料請求ぐらい覚悟しておけ」(続く)

法律用語解説:調停
協議(話し合い)で離婚がまとまらない場合には,裁判所の利用を考えることになります。
しかしながら,離婚事件においては,すぐに「訴訟」手続きをとることができず,まずは「調停」つまり,裁判所でなお話し合いを続行する手続きを取らなければなりません。実務上,「訴訟」まで進まずに「調停」による話し合いの手続きで離婚をする方も多くいます。調停は,調停委員2人が当時者双方からお話を聞いて,話し合いを補佐する方法で行われ,裁判官がお目見えする場面は限定的なものとなっています。