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こんにちは。迷える相続シリーズも今日が最終回。残念ながら自分たちでは維持できない現実を受け入れ始めた三姉妹。同じ気持ちで継承してくれる相手を探し始めます。さて、どんなエンディングを迎えたのでしょうか?

解決だけでは終わらないドラマがある
ショートストーリー 法律の向こう側
第六話 迷える相続③




「以前、ママの私設美術館を作りたいって言ってくれていた人覚えていない?その人に相談してみるとか。金沢の高級旅館の女将で、いつか自分の代になった時はママの作品を集めた空間を作りたいって」

「思い出した!ママの絵のファンで、旅館にはたくさん飾ってくれているのよね。雑誌でも時々紹介されているし知ってるよ」遥も思い出したようだ。

「確かに…話だけはしてみても良いかもね。明日にでも連絡して金沢に行ってくるわ」

数日後、金沢の旅館に長女の葵が訪れ、今までの母の絵を支えてくれたお礼と母が亡くなったこと、実家のアトリエが売却しなくてはならないことなど女将に事情を素直に話した。するとお線香をあげたいので、一度東京に来てくれることになった。

翌週、女将が上京して世田谷の屋敷に来てくれた。
旅館としての方向性を見失っていた頃、母の絵に出会い少しずつ買い集め、それぞれの部屋に飾るように。そして絵のイメージに合わせて部屋の内装を変えるようにしてから、方向性が見え、今の成功につながったのだと彼女は言う。

「本当にお母様の絵には救われてばかりでした。小さな旅館ですが、全国から女性が多く泊まりに来てくれるようになったのは、お母様の絵の力です。本当にお母様の死は残念でなりませんが、これからも絵は生き続けていくでしょう」

「ありがとうございます。その言葉だけで母も喜んでいると思います。あと、先日も少しお話しましたが、この実家とアトリエの売却先を探しています。本来ですと、私たち3人で維持していきたいのですが、お恥ずかしながらそんな力がありません。でも、私たちは両親の思いが詰まったこの家を、無駄にはしたくないのです。この思いを理解していただける方にお売りして、お使い頂きたいと思っているのです。お願いできませんでしょうか?」

「お話を伺った時は正直、驚きました。今まで東京には縁があまりなかったものでして…場所の想像もつきませんでした。このお屋敷ですと趣もありますし緑もとても多いですね。旅館のイメージとも近いので、何かお手伝いできるかもしれません。お母様の絵には本当に不思議な力がありまして、心を落ち着かせ静かに、芯の強さを分け与えてくれるのです。この地に来てまた私もパワーをもらえました。一度、持ち帰って主人と話をしてみます」

数日後、女将より正式に購入させていただきたいとの返答があった。
旅館で腕のあるパティシエを独立させ、ここをサロン・ド・テとして使わせて頂きたいと。アトリエ周辺はそのまま残して、私設美術館として訪れたお客様たちに開放して残したいとの申し出があった。今の三姉妹にとっては願ってもない話だった。しかも私設美術館の運営は残された家族に任せたい、とも。

「小さい頃、母のアトリエでよくみんなで遊んでいたんです。この場所だけはなくしたくなかったので…本当になんてお礼を言ったらいいのか…!母の夢が叶いました」
遥が涙ながらに言った。

「いえ、今の私たちがあるのはお母様のおかげです。逆にもったいないぐらいのお話だと思っていますが、大切に受け継がせていただきます。私どもの旅館のお客様は首都圏の方も多いので、その方々にもこの雰囲気は気に入っていただけるかと思います。美術館の館長はお嬢様たちにお願いしたいのですが、そちらだけご協力お願いできますでしょうか?」

「もちろんです!本当に…本当にありがとうございます!天国の母も喜んでくれていると思います」葵もまた涙している。

「こういう継承の形もあるんだね。これもママの絵の力だね」
こうして迷える相続は、売却代金から相続税を支払い、その残りを均等に姉妹が分け合うことで収束した。そして、昔のように三姉妹が母のアトリエに再び集まることになったのだ。(終わり)

法律用語解説:換価分割
不動産を売却してその代金を分割すること。不動産の分け方が決まらない場合、代償分割ができない場合は最も有効な分割方法である。競売よりも任意売却の方が高値が付くので、遺産分割調停でも最終的には任意売却で合意に至ることが多い。


いかがでしたでしょうか? 迷える相続。実際にはこちらの相談も多いようですので、次週は水谷弁護士より「迷える相続」について解説をお届けしたいと思います。お楽しみに!