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こんにちは。法律ショートストーリーの新シリーズお楽しみ頂けていますか?
亡くなった両親が大切にしていた実家の相続について、葵と梓と遥の三姉妹が葛藤しています。今までのショートストーリーと違う「争わない、迷える相続」。解決への道筋は見えたのでしょうか…?

解決だけでは終わらないドラマがある
ショートストーリー 法律の向こう側
第六話 迷える相続②
 



「じゃぁ、一度その用賀の弁護士先生のところでみんな揃って話を聞きに行かない? ここで話し合っていても堂々巡りなだけよ。そしてこの家にいると感傷的になってしまうし…少し状況を整理してもらって、俯瞰で現状を知る必要があると思うわ」
長女、葵の提案であった。

「私もそれがいいと思うわ。専門家の話を聞いてみたい。遥も行ってみようよ」
「梓姉ちゃんまで…。でも私は絶対に売るのは反対だからね。」
そして後日、用賀にある弁護士事務所を訪れた。

「みなさまのようにどうしていいかわからない、どれが得策なのかわからない…
という相続のご相談って、実はとっても多いですよ。こういう時はまず話を整理し、客観的になって考えてみましょう。」
弁護士のこのひと言に姉妹たちは少し安堵の表情を浮かべた。

「不動産って,共有にするのかな,と思いがちですよね。共有分割はそのまま、共有名義にしてしまう。その場は丸く収まるかもしれませんが、将来的にみてそれぞれのご家庭や子どもたちが増えていくとこの関係性は難しくなりますのでオススメしません。

不動産を相続する場合、共有にする以外に,3つの法的手段があります。
まず①現物分割。不動産が3つあったら,それを一つ一つ分けるようなやり方です。皆さんの場合、複数の不動産があるわけではないので、難しいですね。
次に②代償分割。つまり,誰かに寄せて分ける方法です。誰かが全て相続する代わりに、その相続分に応じた金銭を支払う方法です。どなたかが代表して相続し他の方々に金銭を支払えるなら、この方法はとても有効です。
三番目は③換価分割。こちらは売って分ける方法。売却することで相続税分を支払い、残りを3人で分配するので、一番平等で現実的かもしれません。


いずれの場合も、土地を売却しないのであれば、相続税を払わなくてはなりません。現金がない場合、土地を担保にお金を借りて相続税を支払うことになります。こちらの土地建物は相続税評価で1億2,000万なので,このままだと相当額の相続税がかかってくるでしょう。お母さまの預貯金500万では足りず,借金をすることになります。
そして、毎年固定資産税や維持費も諸々かかるので、その後不動産を保有していくことを考えると、建物を建て直しして何かアパート経営をするとか、商業用の土地利用法を考えなければ、借金の返済も難しいかと思われます。一気に説明しましたが、いかがですか?少し頭の中が整理されましたか?」

あれだけ感傷的になっていた三女の遥かでさえ、現実を受け止め始めているのがわかった。そのぐらい、今の自分たちにはいくら「維持したい」気持ちがあっても、叶えられることができない現実に直面しているのだ。

「…こう考えればどう?もし自分たちで維持はできなくても、誰か同じ気持ちで現状を維持してくれる人を見つけるっていうのは。お父さんは有名なギャラリストだし、母は人気画家よ。そのアトリエ兼自宅を、ただの不動産として売却するのはもったいないよ。あれだけ憧れの自宅としてデザイン雑誌やミセス系の雑誌にも何度登場したことか。ちゃんと価値をわかってくれている人が絶対いるはずだって。」三女の遥が言い出した。

「またこの後に及んでそんな夢物語を。そんなツテ、どこにあるっていうのよ…!」
「…待って、葵姉さん。なくも無いかもよ…!」
次女の梓が思い出した。(続く)

法律用語解説:代償分割とは
一つの不動産を複数人で相続する場合に,誰か一人の名義に寄せて,その価格の不均衡を金銭(代償金)で解決するやり方。
代償金になるキャッシュ十分にある場合は有効な分割方法である。