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こんにちは。法律ショートストーリーの新シリーズがいよいよ始まります。
今回も引き続き相続にまつわるお話なのですが、今までと違うのが争わない相続、ただ迷える相続。亡くなった両親が大切にしていた実家への思いと、目の前にある現実的な問題、その狭間に揺れ動く三姉妹の葛藤のお話です。

解決だけでは終わらないドラマがある
ショートストーリー 法律の向こう側
第六話 迷える相続①
 



「亡くなってから10ヶ月以内に決めないと相続税が高くなるんだって。どうしようか…。」
弁護士事務所から帰ってきた、長女・葵の言葉だった。

65を過ぎたばかりの母が先月、突然、病に倒れて亡くなった。私たち三姉妹はその状況を未だ受け入れられずにいた。とはいえ、実務的なことを済ませておかないといけない、と長女が用賀の女性弁護士を訪れたのだった。

世田谷の砧公園のほど近く、古いがとても趣のある屋敷が私たちの実家だ。すでに3年前に他界している父はギャラリスト、母は西洋画家という両親だったので、アトリエも兼ねた自宅には多くの絵画や陶器をはじめとする美術品に溢れていた。時々、ミセス雑誌の撮影が行われるほど洗練された空間で、特に母のお気に入りは、手入れの行き届いた庭だった。私たち三姉妹はここで生まれ育ち、この家が大好きだった。

「何言ってるの! このお家はママとパパの大事な家よ。私たち3人で守っていかないと!」三女の遥は目に涙を浮かべながら訴えた。彼女は母の血筋を受け継ぎ、彫刻家として活動していた。

「手っ取り早いのは3人での共有。でも3人で共有となると、今後それぞれ家族が増えると、もっとややこしくなるわ。無用な争いごとになるような火種は作りたくないわ。それに、お母さん、不動産だけで預金は大してないみたい。相続税評価にしても土地建物で1億2,000万はくだらないって、税理士さんが言っていたわ。もしここをこのままの状態で守るのであればら土地を担保にお金を銀行に借りて相続税を払わなくてはならないのよ。」

長女の葵は家族の中で唯一、現実的な視点を持ち合わせていた。有名大学を出て商社に勤め、早くに結婚し2年前に旦那さんの海外赴任先から戻ってきたばかりだった。

「じゃぁ葵姉ちゃんは、売ってしまえって思っているの? この家が人の手に渡るなんて、そんなの嫌よ! 梓姉ちゃんはどう思う?」
泣きながら訴える遥の姿は子どもの頃から変わらない。

「もちろん維持したいとは思うわよ。でも誰かがきちんと住むなり、手入れをし続けなければ、どんどん荒れてしまう一方よ。どうしたらいいのか、正直、私もわからないわ。昔、よくお庭を眺めながらお母さん言ってたよね。『私たちが死んだらこの家はギャラリーにして。お庭をちょっとしたカフェにして、訪れた人にお茶を出してあげてね』って。もう少しお金を残してくれていたら…そんな夢、残念だけど叶えてあげられそうにないよ。今の私たちには。」

「そう、梓の言う通りよ。お母さん、そう思っていたならもう少しお金を残しておいて暮れたらよかったのに…預金口座には500万ほどは残っていたけど、それを足しても借金をして、毎年固定資産税も払ってメンテナンスもして…。とてもじゃないけど現実的じゃないわ。」

「そんな…!みんなパパとママと私たちの思い出がいっぱいあるこの家、売り渡してもいいの?!そんなの私耐えられない!」

遥は庭に飛び出した。みんな思いは同じだ。ではどうすれば…。(②へ続く)

法律用語解説:換価分割とは
一つの不動産を複数人で相続する場合のひとつの方法。売却してその対価を複数人で分けるというもの。



これまで争族と言ったような”争うストーリー”を多く展開してきましたが、こう言ったお困りごとの相談も多いのです。両親への思いと現実との壁。三姉妹はどのような選択をするのでしょうか。では次週もお楽しみに!