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今週も始まりました。いよいよ先妻の子である主人公と後妻家族との”争族”問題のクライマックスです。
弁護士二人に相談したことで、自分の大切にしたい思いが明確になったすみれ。
とうとう遺産分割調停の申し立てを起こすことに。調停でどんなドラマがあったのでしょうか…?

解決だけでは終われないドラマがある
ショートストーリー 法律の向こう側
第五話 法定相続人③ ~先妻と後妻とその子どもたち~




調停の申し立てをしてから一ヶ月ほど経った頃、家庭裁判所から呼び出しがかかった。

第一回の期日、まずは調停委員に今までの経緯や現在の状況を説明した。
自分で主張を裏付けるための証拠や書類は弁護士が用意してくれたので、私は彼女の陳述を確認するだけで済んだ。

調停と聞くと「取り調べ」のようなイメージを持っていたが、そんな雰囲気もなく穏やかな雰囲気だ。何よりも相手家族と顔を合わせず、気兼ねなく主張ができることに一番心が救われる。とはいえ6~7回調停に通うと思うと、少し憂鬱になるが…。

先方の主張は、世田谷にある1億3,500万の事業用物件を後妻と2人の子どもたちで相続し、現金の1,500万を私が相続するという内容だった。
法定相続なら遺産総額1億5.000万のうち後妻に7,500万、あと子どもたちそれぞれ2,500万になるので、1,000万円が足りない。これではさすがに不公平だ。

だからと言って換価分割にして不動産を売るとなると…ますます揉めそうだし、共有にすることなんてもってのほか。不動産を譲って、その対価分を寄せて分ける代償分割でどうにか同意を得たいものだが、マイナス分の1,000万を後妻側がどうにか負担しなくてはならない。しかも不動産分の相続税も多額にかかってくるだろう。

落とし所が見つからないまま、何度か調停が続いた。弁護士に今後の流れを訪ねてみた。
「このまま調停でまとまらなければ審判で決着をつけることになります。そうなると換金して分割、という流れも大いにあり得ます。競売によるものなので、かなり低い金額で落札されてしまうケースが多いので、これは避けなくてはなりません。これは先方もわかっているはずです。どこかで手を打たなければ…」

そして5回目の期日、突然事態は動いた。後妻がこう言ったそうだ。
「…わかりました。代償分割で進めましょう。彼女にも今まで肩身の狭い思いをさせてしまいました。最後ぐらいは彼女の思いに添いたいと思ってはいました。それに何よりも主人が頑張って手に入れた不動産をみすみす売却する気もありません。娘たちにもいずれ事業を注いでもらいたいと思っています。それまでは私が持ちこたえるしかありませんから。」

こうして後妻自ら足りない分の1,000万を不動産を担保にした借入れで補填し、代償分割の方法での調停で決着がついた

帰り道、収束したという実感がない私をみて、弁護士がこう言った。
「最初は意見が違っていても何度か調停で冷静に話し合っているうちに、いろいろな思いが錯綜するものです。何を大切にしたいのか、何を守りたいのかが彼女の中で明確になったのでしょう。」

「彼女、相続税もありますし私への補填分も…大丈夫なのでしょうか?」

「生命保険などもあったかと思いますし、その辺りはもうすみれさんの心配には及びませんよ。何よりもすみれさんの思いを汲んでくださったのが良かったですね。亡くなったお父様もお母様も安心していらっしゃいますよ。」

相続というものは争うことばかりかと思ったが、そればかりではないのだとはじめて思えた。
そして過去に縛られていた自分がやっと解放され、未来を向くことができた瞬間だった。


法律用語解説:代償分割
複数人いる中の特定の相続人がある不動産を単独で相続し、対価的な不均衡を他の相続人に対して金銭などを提供することで是正する「寄せて分ける」方法。

不動産を複数人で相続する方法として、代償分割のほか、他には現物分割(各相続人がA不動産、B不動産、とそれぞれ相続する方法。不動産の数が見合わないと難しく、一つの不動産を共有することではない。)と換価分割(遺産を全て現金に換金し分配する)の3パターン。


これまでのショートストーリー 法定相続人①はこちら
これまでのショートストーリー 法定相続人②はこちら




いかがでしたでしょうか?相続問題、いろいろなドラマがありますね。
次回からはまた新しいショートストーリーでお会いしましょう。お楽しみに!